事業会社でフィットするための視点とは?
野崎:谷澤さんは食品業界に対する知識があったとはいえ、事業会社では求められるスキルや知識も変わってくると思いますが、どのようにフィットさせていったのでしょうか。
谷澤:インテージ時代は、クライアントへの貢献を第一に考えて仕事をしてきましたが、それをカルビーに置き換えただけですね。どういった課題を抱えているかを把握し、その課題解決に必要な方法を突き詰めて考える。支援会社として与えられた課題を100%達成するのは当然ですが、その先の提案も常に見据えていました。

野崎:一方で苦労した部分はありましたか。
谷澤:最初のころ苦労していたのは、アイデア発想ですね。結局支援会社のときはリサーチャーという職務柄もあり、論理的思考で与えられた課題に対する答えを導き出せばよかったのですが、事業会社ではアイデアに対して意思決定をし、そこにお金をつぎ込むわけですから、当然アイデアの真価が問われます。そして、それは必ずしもロジックだけで辿り着けるものではなく、筋のいいアイデアを出せるようになるのには非常に苦労しました。
野崎:想定よりも高い水準のアイデアが求められたということですか?
谷澤:そうですね。自分が事業会社側になって気づくのは、支援会社時代に得意げにプレゼンしていた自分のアイデアが、いかに浅いものだったかということです(笑)。自分が考えたようなアイデアは、既に他のマーケターの方は考え付いていて、やらない理由、もしくはやりたくても実現できない理由も明確に存在していました。
支援会社にいるときにもっとマーケティングに関する事例などをインプットしておけばよかったと思いましたね。
メーカーに来てマーケティングの世界が広がった
野崎:支援会社にいると普段のタスクに忙殺されて、そういった事例がインプットできていない方も多く見受けられます。支援会社時代から、自身が関わる領域以外にも積極的にインプットしているかが重要ということですね。
さて、カルビーに来てから最初の3年半はポテトチップスのマーケティングを担当していたと聞いているのですが、その中で得られたスキル・経験はありますか。
谷澤:インテージにいたころも、メーカーのマーケターとお仕事をしていたので、どのようなことをしているのかはなんとなく理解しているつもりだったのですが、実際に入ってみると見るべき領域が想像以上に広いことに気づかされました。
具体的には、商品開発1つとっても材料(特にカルビーの場合、ジャガイモ)の調達や生産ラインの構造についても理解する必要がありますし、商品計画を立てようにも、どの工場からどれだけの量を供給できるか、という工場の生産能力を無視できません。新製法や、新しい包装形態の商品を作るときには工場に出向き、自分の目で確かめ、工場の方たちと意見交換もします。
野崎:生産ラインや供給量まで意識してクライアントに向き合えてる支援会社のマーケターは多くないでしょうね。また工場などの現場に足を運ぶようなマーケティング職以外の方とのコミュニケーションも大事な仕事というわけです。
ここまで、谷澤さんのキャリアを振り返ってきましたが、支援会社で営業・リサーチャーとして行ってきたことや考え方を活かして向き合っていた業界の事業会社に転職されるという流れはキャリアを逆算して設計する上で、参考になるのではないでしょうか。
また、マーケティングの事例やノウハウのインプットを日々のルーチン化することも、非常に重要なのだと感じました。谷澤さん、貴重なお話をありがとうございました。