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MarkeZine Day 2020 Autumn Kansai

広告インハウス化成功企業に聞く、組織作りの秘訣と気をつけるべきポイント

 マーケティングツールの民主化にともない、インハウスの広告運用にトライする企業は増えている。新型コロナによる予算削減でインハウス化を検討する企業もあるが、成果が出せなければ元も子もない。11月20日に開催されたMarkeZine Day 2020 Autumn Kansaiでは、マーケティングチームのインハウス化を成功させたななしの脇坂茂寿氏とコードキャンプの田中ミツル氏を招き、インハウス化支援のプロフェッショナルであるアタラの清水一樹氏が両社の取り組みからインハウス型組織作りの勘所を探った。

インハウス化すべき組織の特徴

 近年、広告運用のインハウス化が盛んに進められている。PDCAの高速化やコストカットなど目的は様々だが、効果的に成果を生み出すインハウス運用とは一体どのようなものなのか。

 モデレーターを務める清水一樹氏は、運用型広告の黎明期よりプレーヤーとして身につけたスキルを活かし、現在はアタラで企業のコンサルティングに携わる。とりわけインハウス化の支援を得意とする同氏の案内でディスカッションが進められた。

 大阪に本社を置くななしで、ブランド腕時計のサブスクリプション型サービス「KARITOKE」の広告運用をたった1人でインハウス化したのは脇坂茂寿氏だ。自他共に認める広告好きとして、社内横断型のコミュニケーションや、開発・デザイン領域に及ぶ情報収集へ熱量高く取り組む。

 IT人材の採用と育成を支援するコードキャンプの田中ミツル氏は、プログラミングスクールを主催するかたわら、個人事業として企業のWebマーケティング支援も行っている。新卒で入社した大手ネット広告代理店での経験や、事業主サイドでインハウスマーケティングに従事した経験を持ち、コードキャンプのインハウスマーケティングチーム立ち上げに貢献した。

左:コードキャンプ株式会社 個人事業部 Web Marketing Specialist 田中ミツル氏 中央:ななし株式会社ななし株式会社 KARITOKE事業部 マーケター 脇坂 茂寿氏 右:アタラ合同会社 執行役員 シニアコンサルタント 清水 一樹氏
左:コードキャンプ株式会社 個人事業部 Web Marketing Specialist 田中 ミツル氏
中央:ななし株式会社ななし株式会社 KARITOKE事業部 マーケター 脇坂 茂寿氏
右:アタラ合同会社 執行役員 シニアコンサルタント 清水 一樹氏

 そんな3者によるディスカッションの最初のトピックとして掲げられたのは、「インハウス化すべき/すべきではない」の基準がどこにあるかという議題だ。脇坂氏は、トップダウン型の組織や部門間の断絶が著しい組織にとって、インハウス化は難易度が高い取り組みであると指摘した。

 「完全なるトップダウン体制下では、入稿するたびに承認が必要となるためスピード感が出しづらく、トップの言葉を鵜呑みにし過ぎると現場の残業が増え疲弊してしまいます。ボトムアップで意見を述べやすい環境がインハウス化には必要です。また、広告運用に不可欠な開発やデザインの担当部署とカジュアルに会話ができる環境も求められます。部門間に断絶があると、役割分担や意思決定が不明瞭になり、成果にも影響が及ぶからです」(脇坂氏)

 田中氏は、インハウス化によるコストカットを極端に期待することの危険性を以下のように語った。

 「組織の規模にもよりますが、採用や教育、組織の編成を考えるとインハウス化にかかるコストは一時的に膨らみます。コストカットだけでなく、その他の副次的な影響を考えた上でインハウス化という大きな決断をすべきです」(田中氏)

 また、田中氏によれば、「縮小傾向や現状維持状態にある事業のインハウス化もおすすめはしない」という。そのような事業環境下だと、アサインされたメンバーのモチベーションが上がりづらいためである。そういった事業はむしろ代理店の安定したオペレーションに任せるのが得策だと田中氏は考えているようだ。

 「レッドオーシャンの市場で集客しなければならない場合も、その市場での広告での勝ち筋を知っている代理店のほうが初動のパフォーマンスが良くなる場合があります」(田中氏)

 2名の意見を受けて、清水氏は「コストカットだけのインハウス化は危険で、インハウス化による広告成果の向上を実現するために、これまでと異なる投資配分に変える意識を持つことが重要」とまとめた。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/01/25 09:00 https://markezine.jp/article/detail/35259

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