強いインサイトはブランドの再定義にも使える
マインドジャーニーを考える中で、特に強いキーとなるインサイトが発掘され、それがカテゴリーを再定義する要素となることも多い。特に考えもしなかったバリアやインサイトが出てくれば、再定義の要素として使えるはずだ。なぜならバリアやインサイトが今までの想定とは違うところに存在するならば、想定外の解決策としてカテゴリーの期待をシフトさせることができる可能性が高いからだ。それをブランドの再定義に活かすことでキーとなるバリアがなくなり、使用や購買に結びつけることができる。

ここで、インサイトが強いか弱いかを判断する方法を具体的にお伝えしておく。本連載の第1回で人の無意識を探る方法を説明する中で、無意識とは、一見澄んでいるように見える水の下に溜まった泥の中に隠れているものと表現し、水の中に石を投げ込むように、様々な刺激物を与えることで浮かび上がってくる違和感や納得感だと説明した。ではそのインサイトが強いか弱いかをどのように判断すれば良いのか。
具体的に強さを判断する方法だが、ユーザーの無意識を探るためのテストを実施する中で、出てきた「インサイトらしきもの」を消費者に「こういうことですか」と投げかけてみる。すると、「なるほど。確かに考えもしなかったけど、その通りだ。私は気づかなかったけれど、あなたはよくわかりましたね!」と少し興奮気味に言われることがある。
無意識は消費者自身の言葉で表せないからこそ、ぼんやりとした感覚にいろいろな刺激物を投げかけることで、徐々に明らかになる。消費者自身が気付いておらず、少し考える時間が必要だったり、言葉ではなく表情や仕草で示したりすることもある。刺激してみて、クリアにわかる時もあれば、おそらくそうだろうというレベルの時もある。消費者がそのインサイトを言われた時に、感情が揺さぶられ、納得感が満ちあふれるような場合は、強いインサイトだと考えられるだろう。逆に言うとそれほど強いインサイトとはわかりにくいものなのだ。
また、自分のブランドの独自資産がそのインサイトを活用できるかどうかも、強さを判断する一つの基準になる。たとえば「クリスマスの直前、子供はサンタさんからプレゼントがもらえないかもしれないという不安があるから、突然いい子に見せようと思う。でもついついボロが出てしまうことが嫌だ。」というインサイトがあったとする。このインサイトが一番使えるブランドは、日頃からサンタや魔法使い、はたまたヒーローなどの架空のキャラクターを使っているテーマパークなどだろう。しかし、このインサイトをレクサスが使おうとしても使えないし、無理やり使おうとしても違和感のあるキャンペーンやメッセージになってしまうだろう。
こうして、マインドジャーニーを作る際に出てくるインサイトの強さを判断し、時にはカテゴリーやブランドの再定義に活かすこともできる。