一貫性をもったキャンペーン設計にも役立つ
マインドジャーニーができた後は、(そこで出てきた強いキーとなるインサイトを基にするなどして)再定義したカテゴリーそしてブランドを、メディアを横断するコミュニケーションの核(もしくはコンセプト)に変化させる。そして、それをマインドジャーニー全体とフェーズごとで何回接触させる必要があるのか、またフェーズごとに伝える場所や瞬間をより具体化する必要がある。もちろん、マインドジャーニーでクリアになったバリアを払拭することも忘れてはならない。
前回の記事では、Google Nestを「(家の中で)取るに足らない様々な情報を学ばせてくれたり楽しませてくれ、家事も助けてくれるヘルパーのような」デバイスと(再)定義することを提案した。これを例に考えると、「取るに足らない様々な情報に触れて楽しめるというベネフィットが実感できない」というキーとなるバリアがマインドジャーニー探索の中から発見され、それに対して「日々の生活でベネフィットを実感してもらう」というコミュニケーションの目的が設定される。
家の中で人々が取るに足らない様々な情報を知りたくなる瞬間(モーメント)は、多分に存在する。テレビを観ている時、YouTubeを見ている時、ふと聞いたことがない言葉が耳に入った時、昔勉強したけれど忘れてしまって喉まで出ているのに思い出せない時、明日の天気が知りたいけれどすぐに調べられない時など、多くのモーメントがある。
そこで、たとえば「日々の生活で、喉まで出ているのに思い出せないものは多々あるが、どうでもいいと言い訳を言いつつ、やはりどうしても気になってしまう」というインサイトを発掘し、それが強いと判断したとして、「どうしても知りたくなっちゃう“あれ、なんだっけ?”を解決するデバイス」、といったコミュニケーションの核・コンセプトを作る。そこからキャッチコピーと喉まで出ているのに思い出せない人のビジュアルを制作し、その疑問が出てくる瞬間(モーメント)の近くに置く。それがドラマであれば、ドラマの中にGoogle Nestを置いてもらうプロダクト・プレイスメントの施策とTVCMのタイムCMを組み合わせる。同時にドラマニュースのバナーとして、たとえば「半沢直樹の大和田常務の決め台詞なんだっけ?」のようなコピーとビジュアルを作って出稿したり、ネイティブアドとしてニュースアプリのエンタメ・ドラマニュース欄に出稿するといった施策が展開できそうだ。店頭だと「あの家電なんて名前だっけ?を解決しよう」とか「あの家電のCMに出ている俳優は誰だっけ?を解決しよう」というPOPと共に、疑問が出てきそうな様々な売り場においてもらう、といった具合だ。
また、たとえばマインドジャーニーの最終フェーズで、価格が高すぎると思われているバリアがあった場合は、実際に手に取る売り場やオンラインなら購入する直前のページに「エンタメから日々の雑学まで学べてこの値段」といったサブコピーを追加でつけたり、「購入した90%以上の人が大変満足していると答えました」などの安心させるメッセージを付け足して、そのフェーズのバリアを払拭する。
このように、再定義されたブランドを伝えるコミュニケーションの核・コンセプトを作ると同時に、マインドジャーニーにおけるそれを伝える瞬間の具体化、またメディアやフェーズ毎のバリアの払拭などもプランする。こうして、一貫性があり、かつユーザーのマインドジャーニーに応じた、包括的なマーケティングキャンペーンができる。
まとめ
今回は「どこでどのように伝えるか」を中心に、マインドジャーニー設計からメディアプラン、そして包括的なマーケティングキャンペーンの開発までを説明した。次回は、マーケティングの定義が違う業界や商品カテゴリー毎に、どのように成果を出すことが出来るのか、特に外資系企業にフォーカスをあてて説明したい。
アドビ 里村氏による連載「マーケティングの本質を探る」の過去記事はこちらから
【第1回】消費者の無意識に入り込み、行動を変えたブランドが市場を制する
【第2回】消費者の無意識に残り続け、第一想起をとれるブランドが大切にしている「カテゴリー理解」とは
【第3回】マーケティングの本質は市場創造、そのために欠かせないカテゴリーの再定義とは
【第4回】ユーザーの無意識にブランドを入り込ませるには?カギは独自性とモーメント