キャッシュレス決済はどれくらい浸透・定着したか
まず初めに、各決済手段の浸透状況の推移を見ていきます。今回取り上げる決済手段は(1)現金(金券を含む)、(2)クレジットカード(デビットカードを含む)、(3)電子マネー、(4)コード決済、(5)その他(口座振替など)の5種類です。消費増税・キャッシュレス・ポイント還元事業開始前の2019年7月〜8月、還元事業期間中の2020年3月、事業終了後の2020年7月の3期間について、各決済手段を1度でも使用したことがある人の割合(以下、浸透度)を見ていきます(図表1)。

ただし、一人につき調査期間は約1週間となっているため、その週にたまたま当該決済手段を使わなかった人も中には含まれております。
いずれの期間においても現金の浸透度が依然高いのですが、キャッシュレス・ポイント還元事業が開始してからは、他のキャッシュレス決済手段が大きく伸びたことがわかります。特にコード決済の伸び幅が顕著です。また、還元事業が終了しポイントによるインセンティブがなくなっても、各キャッシュレス手段の浸透度に大きな変化が見られません。このことから、キャッシュレス決済が市場に一定根付いたことが読み取れます。そうした背景には、ポイント還元事業をきっかけに一部の生活者が“キャッシュレス決済慣れ”したことや、コロナウイルスの拡大にともない“非接触”が好まれる傾向が高まったことも考えられます。いずれにせよ、1年前と比べ、生活者の決済行動が変化していることがわかります。
次に、生活者のデモグラフィック属性の観点でデータを見ていきます。SCI Payment対象モニターそれぞれの1週間の買い物金額の内、キャッシュレス決済による買い物金額が占める割合(以下、個人内キャッシュレス比率)別に層を分けております。今回は、個人内のキャッシュレス比率が0〜20%の人をライト層、21〜40%をミドル層-1、41〜60%をミドル層-2、61〜80%をミドル層-3、81〜100%をヘビー層とします。
図表2の年代別から見ていきます。

ライト層に着目すると、どの年代についても2019年から2020年にかけて構成比が減っております。一方で、ヘビー層に着目すると、2019年は30~40代がピークだったのに対して、2020年は50代にピークが移っております。
図表3の世帯年収別についても、いずれの世帯年収層でも、ライト層の割合が減りヘビー層の割合が増えています。

以上のことから、この1年間でキャッシュレス決済を増やした人は年代・世帯年収問わず幅広く存在しておりますが、特に50代以降に変化があったことが読み取れます。
また、図表3では、2019年・2020年に共通して、世帯年収が上がれば上がるほど、ヘビー層の割合が増え、ライト層の割合は減っています。
キャッシュレス比率と世帯年収には一定の相関関係が存在していそうです。