開催が迫るオリンピックをはじめ、サッカーやプロ野球、フィギュアスケートなど、スポーツが日本人に与える影響の大きさは計り知れません。しかしその裏側は霧の中…。時事イベントに喝を入れつつ、スポーツ・マーケティングをよく知る著者がわかりやすく解説します。
スポーツ・マーケティングとは何か
いきなりだが、「スポーツ・マーケティング」はマーケティング用語ではない。したがって「マーケティング用語集」には載っていない。実は、スポーツ産業の中でもかなり特殊な事業領域、あるいはビジネス、業界の呼称である。自動車のマーケティングを自動車マーケティングなどと呼ばないように、通常、スポーツのマーケティングをスポーツ・マーケティングとはいわない。
一番の特徴は、このビジネスで扱う商品とは、スポーツそのものではなく、スポーツの持つ、「メディア価値」に基づいて開発された、「商業的な権利」のことである。一般人が買ったり売ったりできない。BtoBの領域なのである。
しかし、「入場チケットは一般の人には買えるではないか?」と気づいた方はスルドイ。厳密にいえば、チケットの販売はスポーツ・マーケティングとはいわない。歴史的にさかのぼれば、それははっきりしている。スポーツ・マーケティングという言葉が使われるようになったのは、1980年代になってからだが、それ以前にだってチケットの販売は行われていたではないか。
では、1980年代になって何が始まったのだろうか。TVの世界的な普及と、そのTVでスポーツが中継されることになって、スポーツのメディア価値が一気に高まった。そのメディア価値に基づいたビジネスは、新たな領域として新たな名前を必要とした。そして生まれたのが「スポーツ・マーケティング」であった。
オリンピックで未曾有の利益
1984年のロス五輪で、大会の組織委員長のピーター・ユベロスが、まさにスポーツのTVの露出を核にしてマーケティングを行い、未曾有の利益を出した。その手法とは、徹底的にTVの露出を利用することであった。
五輪競技のTV露出によって形成されたメディア価値を権利として法定し、スポンサーに与えたり、マーチャンダイジングに利用、キャッシュ化したのである。すなわち、「TV放送権」「スポンサー権」「マーチャンダイジング権」であり、その3つに共通して新たに取り入れたのは、「公式権」という「排他独占」的な考え方だった。
1業種1社という手法もユベロスが取り入れたのだ。それはユベロス・マジックといわれ、その手法はその後のスポーツ・マーケティングの基礎となった。
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広瀬 一郎(ヒロセ イチロウ)
1980年株式会社電通に入社。ワールドカップをはじめ、サッカーを中心とした団体スポーツのイベントを多数プロデュースする。1994年に「2002年ワールドカップ招致委員会」事務局に出向、1999年にはJリーグ経営諮問委員会委員就任、2期4年を務めた。豊富な経験に、スポーツにビジネス・メソッドの活用を訴える先駆的視点を持ち合わせた、スポーツマーケティング分野の論客。著書は『スポーツ・マネジメント入門』『「Jリーグ」のマネジメント』(ともに東洋経済新聞社)など多数。2008年、多摩大学・大学院教授に就任。
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