アプリで来店前・来店中・来店後の「個客理解」が可能に
徳力:どのお客様が、どのショップで、何を買ったかという購買情報がなかったと。
唐笠:そうなんです。一部ハウスカードの情報などはありましたが、リアルタイムでCRMに活用できる情報が乏しかったんですね。
次の図は2018年頃の「POCKET PARCO」の仕様です。ECとの紐付け、お買い物満足度・ご意見を回答いただけるアンケート機能、それから館内の回遊を促進する機能「ウォーキングコイン」を追加しました。

徳力:ウォーキングコインとは?
唐笠:館内でPOCKET PARCOを起動してもらうことで歩数を計測し、500歩を達成するとコイン(インセンティブ)が獲得できるというサービスです。ウォーキングコインに参加するユーザーは、参加していないユーザーよりも店内回遊が増加する傾向にあり、さらに買い回りショップ数が約2倍に、客単価が2~3割増加するといった効果が出ています。
お客様にとっては、新しいショップや商品・サービスと出合っていただく機会が増え、ショッピングの満足度が上がる。テナントさんも、もちろんPARCOもうれしい。デベロッパーであるショッピングセンターらしい機能・サービスの方向性だと思います。
徳力:歩いてもらうことで、店頭のセレンディピティを可能にするということも体現しているのがいいですね!

唐笠:ショッピングセンターやモールって、みなさん寄るフロアやショップが大体限られてきますよね。そこをどうやって普段と違うフロアやショップまで来てもらえるか。これまで店頭のサインやポスターなど様々な方法で取り組んできた回遊の促進を、オンラインで実現した、ということになると思います。

唐笠:OMOという文脈で言うと、オフラインのデータをオンラインデータ化していこう、オンラインにマージしていこうという試みが加速しています。(上図のオレンジ色の)オフラインの取り組みを拡張したのが下図になりますが、スマートスピーカーによる施設案内をやっていたり、一部の店舗には顔認証カメラが設置されていたり、接客(案内)やテナントさんの棚卸業務を担うロボットを試験運用したりしています。

唐笠:「店頭にあるもの」「店頭でのお客様のアクション」をオンラインデータ化するイメージですね。店頭が個客理解を深める場になりつつあるのがわかっていただけると思います。
今はまだ取り組み段階ですが、個客の興味・嗜好や、オンライン・オフラインでの行動データを蓄積し、それらをマージしたうえで、最終的にはAIや機械学習を使って、一人一人のお客様にマッチした提案をスマホアプリ上で行えるようにすることを目指しています。