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働き方に、もっと、自由を!「WHEREから始める」という新しい働き方

人生100年時代、「移住」はマルチステージを探索する一手段に 「関係人口」という新概念を捉える

人生を変えたいなら、住む場所を変えよう

 大前研一さんは書籍『時間とムダの科学』(プレジデント社、大前研一・他著)の中で、「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える。二番目は住む場所を変える。三番目は付き合う人を変える。この三つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは“決意を新たにする”ことだ」と述べています。

 このフレーズは多くの人に引用されているので前から知っていて、そうだよなぁ、と感じていました。今回、移住についていろいろと調べてみて僕自身が思ったのは、移住をする(すなわち“住む場所を変える”)ことで、大前さんが語っている三つの要素の他の二つもおのずと伴ってくるのではないか、ということです。

 たとえば、東京から美瑛町に移住すれば、当然、付き合う人は変わります。また時間配分も、テレビを眺める時間が自然を眺める時間になるとか、かなり大きく変わってくる可能性が高いでしょう。つまり移住は、ここでいう三つの要素をすべて変えることにつながり、結果として人間が変わることになり、人生のマルチステージに対応することになるのではないでしょうか。

 もちろん、住む場所を変えるには、何も移住までしなくても、単に隣町に引っ越すという方法も存在します。しかし、東京から美瑛町に住む場所を変えることは、隣町への“引っ越し”よりも大きな変化をもたらすでしょう。

商店街では、屋根の近くにその店の創業年が刻まれている

 一方でこの数ヵ月にインタビューをした人の中には、「移住って何か大げさな気がします。自分の中では“ちょっと遠くまでの引っ越し”くらいのイメージなんですよね」という趣旨の発言をする人もいました。確かに今まで“移住”という言葉には、「君はこの土地に骨を埋める覚悟はあるのだろうな!」と確認されそうなある種の“重さ”があったように思います。

「移住」という言葉の持つ重みが変わって来ている

 取材を通して、あるいは自分自身がプチ移住をしてみて、どうも「移住」という言葉の持つ重みが変わって来ているのではないか、と感じるようになりました。上記の「ちょっと遠くまでの引っ越し」と言っていた人以外にも、「一生住むぞとまでは思っていない。数年後にはまた他のところに行きたくなるかもしれないし……」とか「この場所が凄く気に入っています。かといってずっと住むかと問われれば、それはわからない。先のことは自由にしておきたいと思っています」といった趣旨の発言が聞かれました。

 さらに、ある人のSNSを読んでいて感じたことがあります。その人は鎌倉に住んでいて、「最近は鎌倉に移住して来る人が増えている」ということを書いていました。「うん? 鎌倉に移住?」と、僕は多少の違和感を抱きました。東京から鎌倉に居住地を変える時、以前なら“引っ越し”と呼んだはずで、その行為に“移住”という言葉は使わなかったのではないだろうか、と考えたわけです。

 移住という言葉に以前まとわりついていたある種の“重さ”が無くなったのだと思います。もちろん今だって、移住にはそれなりの覚悟とエネルギーが必要で、お会いした方はみな“その地域への思い入れ”をもっているようでした。美瑛町で出会った移住者の方たちは一様に、“美瑛愛”を語ってくれました。

 それでもなおかつ以前の「骨を埋める覚悟はあるんだろうな!」といった“重さ”からは解放され、より自由に移住を捉えている方が増えているように思います。

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まずは複数の地域と「関係人口」になってみよう

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2021/04/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35747

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