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「withファン」レポート

商品PRゼロなのに「ブランド好意度」急上昇!老舗菓子メーカー・春日井製菓が“スナック”を開店したワケ

「商品説明は一切なし」でも人のイメージは変えられる

原:これまで様々なテーマで多種多様な業界からゲストをお招きしてきたんですが、その理由は、いろんな業界の人にうちのお菓子や取り組みを知ってもらいたいからなんです。

 イベントの成果についての計測という点では、イベントの開始前と開始後にアンケートをとっています。下図はスナック参加前後での春日井製菓のイメージを比較したものです。

原:「懐かしい」は最初から多いのですが、「新しい」と答える方は最初0でしたし、「イメージなし」という方もいました。これがイベント後になると、ご覧のようにガラッと変わりました。

 イベントには筆力のあるライターさんにもお客さんとしてご参加いただき、終了後にnoteに「体験記」としてレポート記事を書いていただいています。いち観客としての感想がネットに蓄積されることで、来られなかった方にも内容が伝わりますし、ゲストの方々には振り返りにもなると好評です

一人の人の心が動いた瞬間を目撃する

徳力:ありがとうございました。会社に対するイメージが変わっているのがはっきりわかる結果が出ているのはうれしいですね。イベント内では、春日井製菓についての話はしないんですか?

原:スナックかすがいとは? の説明くらいです。お菓子は食べてもらえばわかりますから。オンラインに移行してからも、うちのお菓子を食べてもらえるように、お得すぎる詰め合わせを送料込み1,000円で数量限定販売し、事前にご指定の場所にお送りするコースも設けています。皆さん「こんなに入ってると思わなかった」と笑って驚かれます。

徳力:そういった、みんなで楽しい時間を共有した際に食べた製品、会社というのは、あとの印象もよくなる可能性は高いですね。

原:はい。お客さんとして参加してくださった方から開催後にメッセージをいただいたんですが、「今日スーパーの売り場でグリーン豆と目が合ったので、買い物カゴに入れちゃった」と。「今まで何度もその棚の前は通っていたはずだけど」って。これはすごく嬉しかったですね。こういう変化がゴールのひとつだと思っています。

徳力:それはいい話ですね。ブランドが受け入れられた瞬間を目の当たりにしたわけで。

原:そういう関係になるためにCMやキャンペーンも使いますが、「スナックかすがい」のような濃厚なブランド体験ができる活動にも、注力していきます。

「こんなことをやりたい」と社長に聞いてみると……

徳力:先ほど入社してわずか2ヵ月半で始めたとおっしゃいましたが、社長や周りの反応はどうだったんですか。反対はなかったですか。

原:社長には直接話に行きました。社長室のドアはほとんど開いていて気軽に話しかけやすいのですが、創業家の名前を水商売の名前に使うのはやめてほしいと言われるかも、とは思っていました。

 でも、会社の状況と課題を整理して話し、費用はほとんど掛からないけど効果は大きいこと、リスクは少ないことを説明した後に、その名前を「スナックかすがい」にしたいと言ったら、当時の社長(現会長)は「あーはっはっは!」と大笑いして「おもしろいじゃないですか、どうぞやってください」と。

 その後、なんでOKしたんですか? と改めて尋ねたら、「社員がイキイキと働く環境を作るのが、経営者の仕事。社員が自発的に“会社にとって良い”と考えてくれたアイデアは、社会的・費用的に大きな問題がない限り、私がノーということはありません。その人なりのカラーが発揮されることは、私にとって大変おもしろいのです」と言われたんです。

徳力:ステキな社長さんです。

原:ホントですよね。そのあと、営業の取締役と、東京の営業のトップにも話しに行ったんですが、2人とも「やってみたらいいんじゃない? でも営業の皆にはちゃんと伝えてほしい」と。それで営業が全員集まる会議に急遽時間をもらってプレゼンしました。結果、「おもしろそう」という好意的な意見が多く寄せられ、晴れて実現の運びとなりました。

徳力:トップダウンでやるということももちろんあるかもしれませんが、今おっしゃったような、丁寧に説明していくということも、ファン企画を実現するときは、大切なように思いますね。

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春日井製菓の“ファン”の定義は?/質問コーナー

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この記事の著者

吉田 朗子(ヨシダ サエコ)

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部

広告代理店とカナダでのワーキングホリデーを経て、2018年アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)入社。AMNでは、マーケティング部に所属しながら”寄り添う企業として”をスローガンにしウェビナー、イベントなどを開催中。個人では保護犬のボランティアなどを行いながらより良い未来を模索している。

アンバサダープログラム事業部:https://agilemedia.jp/ambassador-program

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宮崎 綾子(ミヤザキ アヤコ)

編集者。編集プロダクション勤務を経て2009年に独立、“ひとり編プロ”アマルゴンを運営。PC・スマホ・ウェブ関連の技術&カルチャー書籍編集制作を中心に、PRコンテンツ企画など幅広く関わる。電子書籍の導入期にはImpress QuickBooksシリーズに参画。実績は https://amargon.net

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田口 和裕(タグチ カズヒロ)

タイ在住のフリーライター。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイトなどを中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。著書に『できるfit メルカリ&LINE&Instagram&Facebook&Twitter 基本+活用ワザ』(インプレス・共著)、『ゼロからはじめるテレワーク実践ガイド ツールとアイデアで実現する「どこでも仕事」...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35817

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