顧客フィードバックを得るための仕組みとNPSの活用
FLUXでは、PMF以前から顧客からのフィードバックを継続的に計測している。永井氏がNPSを開発したベイン・アンド・カンパニーの出身ということもあり、初期からNPSを採用。毎月の計測では回答率が下がる恐れがあり、逆に期間が空きすぎると差分が見えにくいため、今は四半期単位での計測に落ち着いている。NPSは一般的には競合他社と比較する目的で用いられることが多いが、同領域に競合が少ないFLUXでは、前回と比較してどれだけ良くなったかを測る定点観測の意味合いで活用されている。
「とにかくプロダクトのイマイチなポイントを潰していくために使っています。改善のフローは定例会議でCSとプロダクトのメンバーが膝を突き合わせて、開発を要するもの・要しないものをディスカッションし、開発する場合は優先順位をつけています。開発を要しないプロセス改善系のものはCSでクイックに対応しています」(永井氏)
PMF到達に寄与したのは、徹底したリサーチと成果指標の設定
最後に永井氏にここまでの過程を振り返ってもらい、PMFに到達するにあたってカギとなった行動を挙げてもらった。一つは参入前に競合リサーチを綿密に実施したことだ。
「初めにお話ししたように、私たちが参入した領域は既にPSFに達しており『誰がその領域を取りに行くのか』という状況でした。後々大きな会社が入ってきてしまうと勝てないので、彼らが参入していない理由がどこにあるのか、かなり慎重に見ていましたね。国外も含めて60社くらいヒアリングしました。逆に、世の中に新しい価値を問うようなプロダクトで、新しいマーケットを創造していくという場合は、調査はあまり意味をなさないと思います。顧客インタビューなどでインサイトを抽出し、プロダクトを顧客に当てながら作っていくのが良いでしょう」(永井氏)
もう一つは、どの指標を用いて検証するかあらかじめ決定しておくことだという。
「我々の場合、検証したい項目はレベニューアップリフト、つまりどれだけ顧客の売り上げを押し上げることができたか、だけでした。このように決めておいたからこそ、オーバーサーブになるかもしれないとか、売上にならないというのはあまり気にせず進められました。1つから3つくらいのKPIを設定するのが大事かなと思います」(永井氏)
なお、PMFは一度到達したらそれで終了するわけではない。同社も、現在は既存顧客へのクロスセルが大きいとしながらも、プロジェクトポートフォリオ会議をもって、次なるPMFを探ろうとしている。そこには1回目のPMFで学んだことが活きている。元々トップダウンで考える傾向が強かったが、「顧客に当ててみないとわからない」と実感を得たそうだ。FLUXのこれからに引き続き注目したい。

取材後記
成長スピードの速いFLUXさんですが、創業前の綿密な市場調査と成長の前段階でのクライアントを交えた検証期間の双方によって、確かに「PMFフェーズ」が存在していたことがわかりました。課題が存在するか、解決できるか、といったPSFのフェーズは短く、市場調査で補完できたようですが、市場性や収益率などビジネスとして飛躍させるに十分なMarketがあるかの検証はじっくり行っていたのが印象的です。
このように、一見最初から上手くいっている会社でも、実際にはPMFの期間を経ています。そしてその間は売上や直近の成果に囚われず、自分たちの考えたPMFの域値を超えるまで、創業メンバー全員で検証を重ね、それがその後のスムーズな成長につながっている。これがFLUXさんの事例から学べることだと思います。(SPROUND 田中氏)