最高の顧客体験を考慮した設計になっているか
募集初期に登録した顧客は、イベント開催までの間に期待感が下がる可能性がある。そこで同イベントでは、参加登録の後に本人の担当業務を基に最適化した関連セッションやウェビナーを提案した。これにより、期待感を維持したまま当日を迎えられるようにしたのだという。
また当日は、業務に関連するセッションを事前に案内し、視聴後はそのセッションに関連するオンライン上の展示ブースに誘導。つまり、イベントで用意をした各コンテンツをできる限り顧客に案内をする工夫や取り組みを実施している。
さらに住谷氏は、顧客に最適な体験を提供するにはデザインに関しても最適化が必要だと主張する。SoftBank World 2020ではFINDABILITY SCIENCES社のTouchUpというツールを用いてデザインの最適化を図った。TouchUpは脳科学を基に、顧客の注目エリアを計測してビジュアライズできるAIツール。イベントは開催時期や集客期間が定められているため、ABテストツールで改善を繰り返すというアプローチに加え、短い期間でより効率的に最適化を進めるためにこうしたツールも使ったという。
イベント集客の面では、対象となるオーディエンスのターゲットセグメントに合わせたメールの内容、配信バナーのクリエイティブなどを個別に制作。かつ、その「受け」となるランディングページもそれぞれのセグメントで異なるものを用意した。同イベントをより「自分ごと」として感じてもらえる工夫だ。
実績あるシステムを使い分ける
イベントに利用する各システムに関しては、配信システムひとつにしても、その容量・用途によって使い分けたという住谷氏。マーケティングオートメーションプラットフォームにはMarketoを利用し、参加者情報等を管理。各セッションはON24のウェビナーのシステムを使って実施し、基調講演や特別講演といった多くの参加者が予想されるところはブライトコーブの配信システムを採用。これにより、大量の視聴行動、アクセスにも耐えられる構成を実現した。
ソフトバンクはソフトウェアを扱う企業であるため、当然開発の部隊もあるが、あえてSaaSを利用しているのはなぜなのか。住谷氏は「私たちが求めるスピードを考えると、構築するより実績のあるSaaSツールを利用する方が良い」と答える。ツールを導入する際には、業務プロセスの見直しが必要であるため、それにも注意しながら選定を行っているという。
扱うシステムが多ければ、当然負荷も大きくなる。正しくツールを使い、管理するからこそパフォーマンスは発揮されるという前提を踏まえ、不必要にアセットを作ってシステムの動作を重くしないよう、日ごろの運用方法にも注意しているそうだ。
オンラインイベントは配信システムがダウンすると準備がすべて水の泡になってしまう。大きなイベントならば心配はなおさらだ。SoftBank World 2020で配信システム面を支援したブライトコーブはグローバル規模のイベントにおいても動画配信に実績ある企業。大野氏は「何十万人、何百万人が視聴してもダウンすることのないシステムを提供している」と強く語った。
SoftBank Worldの次回開催については詳細未定。ただ今後は、オンラインとオフラインそれぞれの長所を活かすハイブリッドでの実施を検討中だという。イベントを支える技術と表現、顧客体験の在り方は、これからも進化を続けていく。