マーケティングDXに欠かせない「共通言語」とは
――課題解消に向けて、どのようなことから進めていったのでしょうか。
柴田:まずは、データ活用に関するチームのリテラシー向上に向けて、ブランドとEC部門のコミュニケーション体制を変更することから始めました。
我々の所属するEC事業部は各ブランドを横断する組織であるものの、当時ブランド事業部との連携が上手くできていない状況でした。
そこでタイムリーに数字が見られる状態を作り、EC事業部がそのデータを共有しながらブランド事業部とともに、各ブランドの売上を上げていくことで、納得感を与えながらECでの施策を自分ごととして感じてもらおうと考えました。
久保木:その上で欠かせなかったのが、“共通の物差し”でした。
久保木:たとえば、「PV=お店に来て服を手に取ってくれた人の数」「CV=レジまで来てくれた人の数」、という風にマーケティング用語をかみ砕き、店舗担当者でもわかるようなコミュニケーションを意識しました。
評価指標に関しても細かく設定し、どういう計算式で導き出されているかを共有することで、売上の要因をデータで確認できる体制を整えてきました。
それによって、以前は「この写真がかっこいい」などと直感的にクリエイティブで勝負してきたところがありましたが、最近は売上の要因から議論できるようになりました。そのため、データをもとに「売上につながるクリエイティブ」を考えられるようになったことは大きな変化だと評価しています。
松本:マーケティング用語は人によって定義が異なるケースが多いです。そのため、社内の共通言語を作るというのは、マーケティングDXを推進する上で非常に重要なことだと思います。
今回のプロジェクトでも、立ち上げ時期の多くを共通言語のすり合わせに割きました。ここが明確になっていないと、施策をやったときに何で効果が出たのか、出なかったかの分解が上手くできず、データを用いた各ブランドとの連携ができません。PDCAを効率的に回すためにもこの部分の準備をしっかりとしておくことが大事になります。
全ブランドを統合した会員基盤を構築
――チームのリテラシー向上以外にも、データ活用基盤を整える上で実施された取り組みがあれば教えてください。
柴田:2021年3月に、SHEL'TTER WEB STOREで取り扱っているブランドを統合した会員基盤を導入しました。
これまですでに、「SHEL'TTER PASS」という各ブランドをつなぐアプリを3年ほど前から提供していたので、店舗とECで誰がどう買っているかを追えるベースはあったものの、それを追う仕掛けや組織はなく、データがただ溜まっている状態が続いていました。
それが今回基盤を統合したことによって、会員ランクに基づいてベネフィットを提供することが可能になったので、今後はEC、POS、RFIDの取得データからお客様の動向を分析し、パーソナライズされた個別コンテンツを届ける施策に落とし込んでいく段階に移っていく予定です。
現在は、ユーザーデータに基づいたマーケティングの準備まで完了した段階といったところでしょうか。店舗もECもよりユーザーに注目したマーケティングに進化させるべく、ブレインパッド様と議論を重ねています。
久保木:基盤が整ってからは、店舗のお客様をECに、ECのお客様を店舗へと誘導するための訴求方法を様々な形で検証していこうと考えています。
柴田:これまで単一ユーザーが長期的にリピートしてくれているかという指標がなく、グロスの売上が重要指標でした。データが取得できるようになってきたことで、ブランド担当だけでなく全社的に新規ユーザーの獲得状況、リピーターの割合や特性なども見ていけるようになりました。キャンペーン施策の評価もより明確にできました。データで共通認識を持てることで、各ブランド担当が同じ目線で考えられ、そのハブ機能として、EC事業本部が機能できたのでは、と感じています。