消費者が求める「レプリゼンテーション」
ジェンダー「以外」のダイバーシティにまで考慮した広告を目にするのは、現状では稀であると言わざるを得ない。
先ほどのFacebookの調査では、オンライン広告1,022件を分析したところ、障害者を起用した広告は1.1%、LGBTQ+の人びとを起用した広告は0.3%だった。
ちなみに、ジェンダーに関して言えば、起用される女性は男性に比べて14.1倍の確率で露出の多い服装をしており、逆に男性のほうが怒りの表現を見せる確率が女性に比べて2.4倍多いというデータもある。
そうしたオンライン広告を受け取る消費者の視座に立った場合、起こり得るのは企業への信頼低下だ。
さらに同調査から、消費者の71%が企業のダイバーシティを考慮するのとは裏腹に、先述のとおり、54%が自分たちの存在は広告に代弁されていないと感じている。
さらに、Marketing chartsの調査では、消費者の34%が「ダイバーシティを考慮しない企業の商品は購入しない」と回答。消費者のアイデンティティを代弁する姿勢=「レプリゼンテーション」が、いかに広告やビジネスで重要な地位を占めているかがわかる。
その反面教師としてペプシの広告は、プロテストに参加する多様な文化や人種を登場させた後、容姿の美しいセレブリティのケンダル・ジェンナーが警察と和解するような演出をし、オンラインで炎上した。
Z世代はダイバーシティ・ネイティブ
特に、オンライン市場で今後中心的存在となっていく「Z世代」はダイバーシティ・ネイティブと言っても過言ではなく、レプリゼンテーションはますます重要になる。
1995年以降に生まれたZ世代は、デジタルネイティブで、若い頃から様々な情報に触れる機会に恵まれたことから、社会への意識が高いことで知られている。
マッキンゼーの調査によると、彼らの70%が商品の購入先である企業が社会的責任を全うしているかを考慮し、なるべくエシカルな企業を選択するという。
また、Z世代にはコミュニティを重んじる傾向がある。上の世代に比べて、生まれや育ちではなく、趣味や興味を起点としたつながりをオンラインで得やすいことから、「多様な人たちがいるのが当たり前」という感覚が染みついている。
だとすれば、企業は人それぞれの違いを強調するのではなく、「違いはあくまでも普通の光景である」という感覚を広告へと投影させていく必要がある。