MOON-Xが仕掛ける、新時代のJAPAN BRAND
2019年8月に創業したMOON-Xは、日本の高品質なモノづくりとテクノロジーによるシナジーから生まれた、JAPAN BRANDを展開する企業だ。常陸野ネストビールで知られる木内酒造(茨城県)とタッグを組んだクラフトビールブランド「CRAFT X」を皮切りに、昨年3月には、男性用スキンケアブランド「SKIN X」と、女性用スキンケアブランド「BITOKA」を発表。長谷川氏は、「テクノロジーの活用だけでなく、作り手と顧客の関わり方まで含めて、日本のモノづくりのあり方を捉え直し、世界標準のブランドを発信したい」と、同社のビジョンを語る。
そんなMOON-Xが考える顧客への提供価値は、共感・共創・感動の3つだ。ブランドや製品へのこだわりだけでなく、その背景にあるストーリーも発信して共感を生み、作り手と顧客が双方向でつながる。そこから、体験を作る共創が実現し、感動が生まれる。「この輪を回しながら、拡大していきたい」と長谷川氏。さらに、ビールにスキンケアと異なるポートフォリオを扱うビジネスモデルは、MOON-Xの特徴だ。「ポートフォリオの多様性により、顧客接点を多重化するだけでなく、ブランドや製品を通じて貢献できるエリアが広がります。様々な側面からフィードバックをいただくことで、MOON-Xのケイパビリティも強くなっていく」と、ブランド群を作る狙いを語った。
またMOON-Xのブランドは、PDCAを繰り返すテック企業の開発プロセスを取り入れている。発売以降もバージョンアップを重ね、プロダクトそのものの進化が続くスタイルだ。まだまだ、リアルなモノづくりの世界では馴染みのない手法だが、MOON-Xの共創アプローチとしては、既に定着。たとえば、先に紹介したBITOKAでは、「気軽に持ち運びたい」のニーズを受け、使い切りパッケージが登場している。長谷川氏は、今後も共創を加速させたいと話し、「既存パートナーとの継続だけでなく、MOON-Xのビジョンに共感された多様な企業とのコラボレーション、そして消費者が参加しやすいパートナーシップやコミュニティ作りに注力しながら、ブランドや体験サービスを磨いていきたい」と、前半のセッションをまとめた。
進化するビール「CRAFT X」は、3代目が発売中
続いて、CRAFT Xブランドディレクターの松田氏が、同ブランドのこれまでを振り返りながら、「作り手と顧客の共創とは何か?」を紐解いていく。CRAFT Xは、“心も潤す「特別なビール体験」を、今こそCRAFT Xと。”をキーメッセージに、作り手のこだわり、ビールが持つストーリーを丁寧に届ける、次世代のクラフトビールブランドだ。MOON-X創業とともに誕生し、以降「進化するビール」として、1年半の間に7種類を提供。プレーヤーが多数存在し、普遍的なカルチャーとして勢いを増しているクラフトビール業界において、累計約5.6万本(2021年1月末まで)を売り上げ、強い成長力を保っている。その背景にあるのが、顧客からのフィードバックによる製品アップデートだ。
同ブランドのフラッグシップビール「クリスタルIPA」は、発売時にポップアップのビアバーを開催。約700名によるアンケートで集められた声は、すぐさま木内酒造へ共有され、商品やマーケティングコミュニケーションの改良へ活かされた。たとえば、日本らしいと高評価を受けた缶デザインは、3パターンに増えたほか、ファンコミュニティの結成やフィードバックセッションなど、顧客同士、顧客と作り手がつながる機会を実装している。まさに、テック企業のプロダクト作りを反映しているのだ。
「リリース後にフィードバックをいただき、アップデートをしていく。迅速な商品化を図り、お客様に一番喜んでいただけるものを探す。もしくは、喜んでいただいているものを、さらに喜んでいただく形にする。それを、ビールで実現しています」と語る松田氏は、アプリやWebサービス運営のキャリアを持つ。
現在CRAFT Xは、初代ロット#000、2代目#001を経て、2020年8月より販売している「クリスタルIPA」3代目の#002のほか、こだわりの素材を用いた「日向夏IPL」も販売中。松田氏によると、ホームパーティー、クラフトビアバー、アウトドアキャンプなど、クラフトビールを飲むシーンは多様化しており、異業種とのコラボレーションを通して、共創の輪が広がるポテンシャルを感じているという。「ビール以外でも、お酒がもたらす歓びをより広げて、皆様の心が潤うために、既存の概念にとらわれない新商品も積極的に検討していきたい」と今後の抱負を語った。