アフィリエイト広告がブランドに及ぼすリスク
アフィリエイト広告は近年、多くの問題が出てきています。特に健康品や化粧品領域で法律の範囲外となる訴求が行われ、問題になっています。「病気が治る」「シミが完全に消えた」など本来言ってはいけないことを、アフィリエイト広告を運用する運用者が報酬欲しさに訴求してしまっているのです。
そうすると結果的に消費者を騙すことになり、騙された消費者はアフィリエイト広告の運用者ではなく、商品を販売する広告主側にクレームを出します。ブランドは信頼を失うことになり、当該のアフィリエイト広告によるマイナスのイメージを消費者に持たせてしまいます。
法律に抵触する内容ではなかったとしても、ブランドマネジメントの観点でのリスクもあります。メーカーやブランドがアピールしたいポイントとは違うポイントでアフィリエイト広告を展開されることで、消費者が意図しないブランドイメージを持ち、誤った方向へブランド・エクイティが積み重なってしまいます(ブランド・エクイティの説明は第1回を参照)。
たとえば、髪にツヤや輝きを与えることを一貫したメッセージとして伝えている女性向けのヘアケアブランドで、アフィリエイト広告を使用したとしましょう。その際に、外部のアフィリエイト広告の運用者が「ツヤ」よりも「薄毛」のほうが獲得広告費が低いことに着目し、「薄毛に効果的なエイジングブランド」と訴求したら……間違ったブランドイメージが消費者に伝わってしまいますよね。
確かに一時的に売上は伸びるかもしれませんが、ブランドが伝えたいメッセージではないポイントで売れていると、長期的にはブランド・マーケティングは失敗となります。ブランドが本来ターゲットにしているのは、薄毛に悩むユーザーではなく、ツヤのある美しい髪を得たいユーザーです。薄毛に悩むユーザーが仮に使用したとしても効果を実感することはなく、ロイヤリティにはつながりません。それどころか、ブランド本来のユーザーを失っていくリスクもあります。

このように、一時的な売上を得るために、意図しないブランドメッセージが出てしまうなど、コミュニケーションのコントロールができない可能性がある点がリスクになります。
D2C事業者はアフィリエイト広告を使用すべきか
ここまで、アフィリエイト広告の問題点について述べましたが、アフィリエイト広告は売上を伸ばすために効果的な施策の一つです。リソースも限られ、半年後にはキャッシュがなくなっているかもしれないベンチャー企業にとって、アフィリエイト広告を活用することで売上が伸びるとしたら導入すべきでしょう。
ブランド・エクイティを高めていくことももちろん重要ですが、その前に会社が倒産してしまっては意味がありません。キレイ事ではなくまず会社を存続させるために、売上を伸ばすことを目的とし、アフィリエイト広告を使用することは否定しません。
ただし導入する際は、リスクをできるだけコントロールできる仕組み作りをしていくことが大事です。消費者から見たブランドイメージと広告主側が伝えたいメッセージを一致させるための努力を怠ると、長期的には苦しい展開になっていくでしょう。