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第106号(2024年10月号)
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【特集:Datorama活用】選ばれる理由、成果に迫る(AD)

ソニーマーケティング流データドリブン実現の軌跡 Datorama活用で進むマーケティングのデジタル化

 全社一丸となってDXを取り進めるソニーマーケティング。マーケティング領域のデジタル化推進の一環として、Salesforce Datorama(以下、Datorama)を導入。広告代理店が保持していたメディアデータを含めたマーケティングコミュニケーション系のデータを集約・可視化することで、効率的なマーケティングコミュニケーションを実現した。さらにビジネスプランニング部門とのダッシュボード共有も始まり、活用範囲を広げている。同取り組みを統括する同社カスタマーマーケティング部門 副部門長 大内光治氏とカスタマーマーケティング部門カスタマーデータ&PF戦略部PF企画課 統括課長 橋本好真氏に詳しい話を聞いた。

ソニーマーケティングが考えるDX

 ソニーマーケティングでは、「可視化(BI)・RPA・AI・マーケティング基盤」を活用しながら、セールス・マーケティング・カスタマーサービス・ビジネスオペレーションの4軸で全社的なDXを進めている。そのうち、マーケティングのデジタル化推進を担ってきたのが大内氏と橋本氏だ。2021年度からはグローバルにおけるマーケティングのデジタル化推進も担当している。

 全社一丸でのDX推進の背景について大内氏は振り返る。

 「過去は課題が山積でした。例えば、各部門・部署でデータとツールが個別最適化して、散在してしまい、全データを集めてみても、ぼやけた全体像しか見えず、できても部分最適のみでした。さらに人によってデータの切り取り方や指標の定義が異なる状況で、正しい判断ができているのか、不透明な環境もありました」(大内氏)

 この状況を打破し、2025年の崖などに備えるため、全体最適へ向けた改善が可能な体制が必要とされた。そこで会社として視点を定義し、構造化し、PDCAを回しながら改善できるよう、全体が戦略的に動けるようにDX推進が始動したのが10年前だった。

ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 副部門長 大内光治氏
ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 副部門長 大内光治氏

ソニーマーケティングのマーケティング戦略

 その中で浮かび上がった課題の一つがCRMの活用だ。CRMのデータをビジネスや顧客満足度に繋げられず、壁にぶつかっていた。

 現ソニーマーケティング株式会社代表取締役社長である粂川氏(当時プロダクツビジネス本部のヘッド)と大内氏は、CRM活用の今後について検討を始めた。

 「当時は、データを活用するものの手応えを感じられませんでした。顧客データやパフォーマンスデータの活用は進んだものの、異なる目的の施策を並べて評価したり、施策の目的と手段の整合性が取れていなかったり。データ活用における共通認識を作ることができていなかったですし、正しい指標で評価できていませんでした。理想の状態からはかけ離れていましたね」と大内氏は振り返る。

 そこで「顧客を中心に据えて、顧客満足度向上によるソニーファンの創造」をマーケティングコミュニケーション戦略の核に据えることを7〜8年前に決定した。

 しかし、この戦略を実践し、全員が同じ方向・目標を目指して動くのは簡単ではない。大内氏が当時危惧したのは、「どのマーケティング施策に対して、誰が、誰に対して、何を目的に話しているのか、が明確でない限り、軸がぶれる」ことだった。そこで行動指針となるフレームワークの設定が求められた。

 それが「ソニーファン創造のためのロイヤリティループ」だ。これは、いわばマーケティングのための地図であり、このフレームワークに沿ってコミュニケーションすることで、誰もが同じ視点で話せる仕組みだ。

 このロイヤリティループの特徴は、直線ではなく曲線なことだ。マーケティングコミュニケーションとしては、マス広告から各種ナーチャリング施策、そして購入、製品登録へと導く。そこから顧客に「ソニーの製品を買ってよかった」「ソニーの製品で生活が変わった」という満足感や期待を超える体験を提供することで顧客満足度を向上し、次、さらに次の製品購入に導き、最終的にソニーファンとなってもらうことを目指している。

 それぞれの顧客接点にモニタリングKPIを設定し、それぞれの施策の目的が達成されているかを計測し、最適化を目指す。

 こうした試みを実行するうちに、大内氏は「アジャイルにPDCAを回す重要性を実感」したという。

 「新規顧客獲得に向けたTV CMなどのマス広告は実施から実績把握まで1年がかりです。しかし、その間にもお客様の心は変化し続けます。高速PDCAを回し、お客様からの反応を示唆として受け取り、アジャイルに対応できるマーケティングの必要性を実感しました」と大内氏。

 “お客様の「今」に常に立ち戻りマーケティングを展開する”それが目指す地平だった。

 アジャイルというと一見、効率性やスピードばかりに目が行きがちだが、ソニーマーケティングにとっては原点である「お客様」の「今」を的確に捉え、顧客が求めるコミュニケーションをするためにこそ、アジャイルであることが必要だったのだ。

 そこで5年前からTableau、Wave Analytics(現Tableau CRM)をはじめとした各種モニタリング・分析ツールを導入。自社データの活用を推進する一方で進め、組織としてもデジタルマーケティング部門とマーケティングコミュニケーション部門を統合。効率的かつ、効果的なマーケティングコミュニケーションの実現を目指した。

効率的なマーケティング実現のための基盤整備へ

 「効率的なマーケティングのためには、ロジックと経験の両方が必要です。ロジックがなければ応用が利かないし、経験しないと勘所が掴めません」と橋本氏。

 そのどちらが欠けても、目指すソニーファン創造に繋がるマーケティングは実現できない。

ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 カスタマーデータ&PF戦略部 PF企画課 統括課長 橋本好真氏
ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 カスタマーデータ&PF戦略部 PF企画課 統括課長 橋本好真氏

 そこで橋本氏は、約2年前に効率的マーケティング実現のためには以下の3つを実現する必要があると考えた。

 1)高速PDCAの実現:把握すべきパフォーマンス指標をリアルタイムに確認でき、計画と実績のギャップを把握し、大幅な乖離があれば、即座に要因の仮説を立てられて、分析、打ち手の検討、実行に進めること。

 今まではマーケティング担当者が施策の結果を見ようとすると、複数のデータソースから、大量のデータを抜いてこなければならず、データを抽出して整理するだけでも複数営業日必要で、リアルタイムに状況を把握し、施策を打つことはかなり難しい。

 2)個の経験を組織の経験へ:過去のキャンペーンの実績や、現在進行形で動いている他のキャンペーンの実績を見たいタイミングで確認でき、振り返りや比較によって、現在のパフォーマンスの分析ができること。

 エクセルベースのレポートでは、過去の実績を振り返り、現在のキャンペーンに生かしたり、他のチームが実施しているキャンペーンを参照に自らのキャンペーンを改善するなどが困難であった。レポートの指標や言葉の定義が担当者ごとに異なり、同じ指標でも年度で定義がぶれるなど、同じ組織の人間が学びを得づらい状況だった。そうした属人性を打破し、個々の経験を組織の経験として蓄積し、共有財産とすることが求められていた。

 3)透明性の担保:「広告代理店と広告担当者」「担当者とマネージャー」など、関係者が同じ指標を同じタイミングで確認できる透明性が保たれた環境で、適切なタイミングでダイレクションができ、手遅れになる前に議論し、打ち手が打てること。

 同社では自社が保有するデータについては、TableauやTableau CRMでダッシュボード化し、全社で活用できる環境を整えてきた。その一方で、広告代理店が管理していた広告のパフォーマンスデータだけはそれが実現できていなかった。

 この3つを実現するため、現状を打破すべくDatoramaの導入が決定された。

 「Datoramaを導入し、マーケティングコミュニケーション系の情報を自動で集約するダッシュボードを用意することで、指標の定義を共通化するとともに、限られた時間を分析立案に使えるようにしました」(橋本氏)

 橋本氏が「指標の定義の共通化」を重視した背景には、ソニーマーケティングという会社全体で「数値化してKPIを見る」方針があり、文化として根付いていることがある。

 「数値化してKPIを見る」、つまり言葉をデータで定義して、誰もが同じ言語で会話して、初めてマーケティングのデジタル化も可能になる。そこでDatorama導入へと繋がっていったのだ。

マーケティングインテリジェンスをマーケティングのデジタル化の基盤に

 ソニーマーケティングがDatoramaを導入した理由は大きく3つある。

 最大の理由は、ワンプラットフォームでビジュアライズまで完結できる点だ。

 通常、BIツールを運用するにあたっては、データの収集→加工→ビジュアライズのプロセスを取り、データの収集→加工のプロセスはデータベースやETLツールなど、BIツールの外で行われる。その場合、人の手が加わり完全な透明性は担保できない。

 その点、Datoramaはデータ収集・統合からビジュアライズまで一気通貫で実行できるため、データの正確性が損なわれない。ここが、マーケターのためのマーケティングインテリジェンス、Datoramaの強みだ。

 またDatorama以外のプラットフォームを導入する費用も不要というコスト面のメリットもある。

 次に、豊富なAPIによるデータ収集が可能な点だ。

 マーケティングコミュニケーションは、複数のメディアを通じてユーザーとコミュニケーションを行う。結果、モニタリングのためには、メディアの数だけデータを用意しなければならない。個々のメディアのデータをそれぞれ定義して取り込み運用するのは非常に骨の折れる作業であり、膨大な時間も取られるため、現実的ではない。

 Datoramaは、Facebook、Twitter、Google Analytics、Salesforce Marketing Cloud、Pardotなど主要マーケティングプラットフォームからSalesforceやAWSなどデータベース系APIを150以上揃え、さらにエクセルファイル、PDFなどの通常ファイルも取り込めるようになっている。

 さらに、SQLレスでデータ加工ができる点だ。

 一般的にダッシュボードを導入するにはIT部門のサポートが必須だ。なぜならダッシュボード用にデータを加工するためにSQLというプログラミング言語が必要だからだ。

 Datoramaは、プラットフォーム内にデータを取り込むためのテンプレートが用意されており、クリック一つでデータの紐付けが可能だ。

 「マーケティングコミュニケーションは非常に変化が激しい領域です。豊富なAPIでデータを取得でき、一定の関数を書くだけでデータの加工ができるので、IT部門の力をそこまで借りずに運用できます。Datoramaは、ウェブアナリティクス業務の経験や、一定レベルのExcel業務経験があれば使えるので、マーケティング部門で活用しやすいソリューションだと思います」と橋本氏は使いやすさを評価する。

Datoramaをマーケティングコミュニケーションの全体把握に活用

 ソニーマーケティングではさらにDatoramaに関しては、その役割を、マーケティングコミュニケーション活動のオーバービューを把握するダッシュボードという位置付けにしている。

 PDCAサイクルにおけるDOの部分に置かれ、マネージャーは経営目標から作成されたKPIの進捗を、担当者はそこからブレイクダウンされた各領域の目標に合わせたKPIの進捗をモニタリングする。

 そこで異常が見られた場合は詳細分析が必要だが、それは詳細各ツールで実施する立て付けだ。そのため、Datorama上にツールのリンクを設置した。この有無でも利用のされかたが変わるのだという。

 「今ではDatoramaを見ながら会話する社員の姿や、代理店とも『それ、Datoramaを確認されましたか?』といった会話が珍しくありません」と橋本氏は現状を語る。

導入に伴い「推移」を見る文化がチームに定着

 さて、PDCAサイクルのDOに位置付けられ、Datorama活用が開始された。その具体的成果はどう現れたのだろうか?

 「Datoramaによって、各指標の推移を見たい時に見られるようになったことが大きいですね」と橋本氏。

 従来は広告代理店、もしくは担当者からのレポートを待って、期待通りに推移しているのか確認するしか術がなかった。しかしDatorama導入により、キャンペーン開始から日々指標の推移を確認し、期待以上にキャンペーン実績がいいものに予算を再投資することが可能になった。また、主要KPIを変更も容易になったという。

 例えば下記の図のように、CPC最適化からCPA最適化で進めていた施策を、再度CPC最適化に戻す場合だ。エクセルで過去1年分のCPC平均値を割り出すのではなく、Datoramaの日付を過去1年に設定すれば、グラフにより大体の平均値が一目瞭然だ。この平均値をターゲットにキャンペーンを実施し、モニタリングすることで、確実にターゲット通りに運用することができる。定点観測だけではなく、リアルタイムの「推移」を把握することで、先々の予測が可能になる。

 「指標の推移に着目し、短期間での大きな変化や、長期的な変化を確認して、変化に意味があるかどうかを検討できるようになりました。また変化を起点に関係者とコミュニケーションが図れるようになったことは、今までとは大きな変化ですね」と橋本氏は話す。

 予算の再配分という点では、特に短期集中のキャンペーンの時に実感したという。準備・実施・終了の期間が短いキャンペーンでは、毎日、進捗を把握し、コンバージョンが良い媒体へ予算を寄せる、追加投入するなど効率的な運用が可能になっている。短期であり広告代理店に毎日レポートをお願いすることも難しく、手探りで進めざるを得なかったのが従来だったが、ここもキャンペーン運用中に改善することが今や当たり前になってきている。

 もう一つは、権限が限られていたデータへ誰もがアクセス可能になったことだ。SNSなど一部アカウントは厳密に権限設定され、そのデータはなかなか見えなかった。しかし、Datoramaに統合したことで、チームの誰もが同じデータを閲覧可能になった。これにより、「隣の人は何する人ぞ」という状況から、誰もが見たい時、見たい切り口で指標を確認可能になった。これこそ、透明性であり、個の経験を組織のそれへと拡大する契機となっているだろう。

Datoramaがもたらしたデータの民主化と意識変革

 具体的成果を上げているDatorama導入だが、こうした成果以上の見えない大きな変化があったと大内氏は指摘する。

 前述したようにソニーマーケティングでは、自社所有のデータ活用・可視化は5年前から進められ、すでに実現している。しかし、マーケティング、特に広告分野は遅れていた。広告データは広告代理店が所有しており、代理店がレポート作成し、広告主であるソニーに報告するという状況だった。しかし、Datorama導入を機に、広告代理店が持つデータもソニー側が扱うということになった。

 これが社内の意識を大きく変えることになった。

 「現在、データ所有を巡る状況は変化しています。広告代理店が持つもの、広告主が持つもの、といった境界は曖昧になってきており、データの所有権でどちらが上だ下だという話はもうありません。それより、データを共有し、同じデータを見て、広告主の課題解決を一緒にしていくべき時代です。この変化をDatoramaはわかりやすく社内に示してくれた。その意義は大変深いものです」と大内氏は強調する。

 Datoramaのマーケティングに関連する成果は、導入当初の想定通りだったが、この社内の意識変化は「想定外だった」と大内氏は言う。

 具体的成果と意識変化という見えるものと見えないものの変化を通じて、今、Datoramaの活用はさらに拡大しようとしている。

 「ようやくツールが整い、マーケティングのデジタル化、DXは本格化します。デジタルガバナンス、指標の定義統一、可視化が一気に実現する環境が整備されました」と大内氏。橋本氏も「プラットフォームが揃い、いよいよという段階です」と話す。

利用部署の拡大、経営層の活用からグローバル展開まで視野に入れた今後の展望

 マーケティングのデジタル化が佳境を迎えようとする中、Datoramaも含めた今後の展望についてはどう考えているのだろうか?

 「利用部門の拡大をしています」と橋本氏は切り出した。実際の売上を持つビジネスプランニング部門が利用を開始すると言う。同部門もデータとツールの散在に悩まされており、Datoramaでマーケティングから売上まで全て一気通貫で俯瞰できることを喜んでいるという。彼らもTableau CRMやTableauは見ており、数字を見る習慣はあるが、マーケティングの広告データを確認はしていなかった。

 売上と、マーケティングコミュニケーション。二つの部署のデータが一つのプラットフォームへと統合されることで、トップマネジメントから現場まで全員が現状把握できるようになり各部署の判断のスピードが上がります。「ダッシュボードは経営陣から現場まで欠かせないツールになるでしょう」と大内氏。

 その時、Datoramaは同社の欠かせない経営基盤の一つになっているだろう。さらに、Datorama導入による世界観・DXの世界への展開を視野に入れて、マーケティングのデジタル化をさらに強力に推進していく考えだ。ソニーマーケティングのこれからの歩みから目が離せない。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/18 11:37 https://markezine.jp/article/detail/36277