明確化した課題から具体的な解決方法を探る
課題が明確化したところで、具体的な解決方法を探りたい。
前述した通り、今回のワクチン予約システムは「供給側の効率化」には成功している点では、評価に値するだろう。ただ、「何でもかんでもDX」という意識が強すぎて、「人の関与すべきプロセス」や「デジタルリテラシー」の配慮がされていなかったという課題が浮かび上がっている。もしこのような視点から事前に検討されていたら、どのような施策になっていたのかを考えたい。まずは分析の整理である。

筆者の友人でもある福岡県議会議員の板橋氏よりFacebookで接種予約のはがきでの実施に関する情報が送られてきたので共有したい。この施策は顧客(ユーザー)に配慮したものであり、その意味では従来の方法である点が評価される素晴らしい施策である。

ただし、供給側の実務負担が増大する懸念があることは否めない。従って「デジタルとアナログのハイブリッド」を検討することを提唱したい。たとえば以下のようなプロセスが考えられる。
Problem(課題)
すべてのターゲット(デジタルリテラシー「底」「中」「高」)が使えて、供給・提供側のオペレーション負荷がかからない仕組みの確立。
Prediction(未来予測)
すべての行政プロセスにおいて行政の負担も軽減し、利用者を誰一人取り残さない仕組みを確立する。
Process(プロセス改善)
誰もが使えるように、デジタルと使い慣れたアナログのハイブリッドなプロセスを導入する。
People(人の関与)
あえてアナログや人の関与するところを作り、また必要な事前教育、事前に経験した人とのコミュニティを作る。
これらの点から、以下のような策を提案したい。このような人間主体のDX(マーケティング視点のDX)を実践できればワクチン接種も余計なノイズなしに実行できたのではないだろうか?
選挙の仕組みを使い(現在は18歳以上が有権者)、年齢が高い順にワクチンが受けられるように事前に日程と時間を調整したはがきを送付。はがきの送付は、年齢の高い人から順次送ってゆく。ワクチンの指定時間でなくても、その日の指定時間以降か翌日に受信できればOKとする。指定日およびその翌日に受けられない人は、宅配便の再配達受け取りシステムのようなオンラインあるいは電話のプッシュボタンで指定する仕組みを採用。ホームページでは日程による混み具合や予約状況がわかる仕組みで、予約の分散化を図る。
マーケティング視点で社会課題を解決しよう
冒頭にも述べたが、今回のワクチン接種予約を取り巻く混乱は、「マーケティング視点(顧客目線)」がなかったために起きてしまった。私が本書を執筆に込めた思いでもあるが、「デジタルとアナログのハイブリッド」な「人による人のためのDX」を目指して欲しいと願って止まない。
江端氏の運営するFacebookコミュニティで、今週5月22日(土)18時より、本記事で触れた内容について特別解説するウェビナーを実施します。MarkeZineの読者の皆さんとも、本件についてディスカッションできればとのことです!ぜひお時間があればご参加ください。参加URLはこちら(Zoomで開催します)。