SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

一人ひとりが主人公「あなたの物語」を飲もう。サッポロビールが進める新しいブランドづくり


ビールが思いを伝える

MZ:ここまでの参加者や購入した顧客の反応で、印象的だったことはありますか?

土代:SNSを中心に「今までのビールとは違う楽しみ方ができる」「メッセージ性が強い」といったポジティブな声をいただいています。

 やはり印象的だったのは昨年6月と10月に発売した「おつかれ山(さん)ビール」ですね。コロナ禍でどうしても鬱屈とした雰囲気があったので、「ねぎらいの気持ちが伝わってくる」という意見がありました。

 これはアウトドアガイドをされている方の「山登りだけでなく、人生には小さな山も大きな山もある。がんばって上ってきた人、皆にささげたいご褒美のビール」というアイデアから生まれたビールです。

 もし、サッポロビールが「山に合うビールをつくりました」と発売しても、なかなか皆さんが自分のこととして受け止め、ねぎらわれるような気持ちにはならないと思います。主人公のアウトドアガイドさんが自分の言葉で説明してくれると、伝わるものがまったく違ってきます。

MZ:通常の商品開発とは製造のプロセスも違ってくると思いますが、ブリュワーさんに戸惑いなどはないのですか?

土代:ブリュワーは普段、ある程度決められたスペックでものづくりをしますし、顧客と触れ合う機会も少ないです。ですから、最初は難しさがあったと思います。ただ、今ではむしろ何のスペックの制限もないところから「発案者の思いをビールにする」ことを楽しんでいる印象ですね。

 発案者さんと何度も打ち合わせして、ビールの種類やアルコール度数、香りなどを決めていくのは、ブリュワー自身の感性も試されます。人生ストーリーの主人公といかに分かり合えるかが、とても大事です。

 その点でもラジオでまず我々がお話を伺い、その上で直接やり取りしてもらうプロセスは有効だと思っています。

「RADIO HOPPIN' GARAGE #0|それビールにしません?な、ラジオ始めます。」より。初回は土代氏と、当初から並走しているキッチハイクの山本雅也氏がこれまでを振り返った(https://www.youtube.com/watch?v=yiCpwotWCgI ラジオより)
「RADIO HOPPIN' GARAGE #0|それビールにしません?な、ラジオ始めます。」より。初回は土代氏と、当初から並走しているキッチハイクの山本雅也氏がこれまでを振り返った(ラジオより)

主人公の熱を上手に伝えるために

MZ:ブランドを立ち上げ、熱量のある発案者さんと接する中で、土代さんはどういった実感を得られていますか?

土代:当社では、日本中の方においしい商品をなるべく安価で届ける、いわば最大公約数的な事業が主軸です。その場合は一般的なマーケティング調査でニーズやボリュームを探っていきますが、一方でHOPPIN’ GARAGEの取り組みは「世の中に伝えたい」イシューありきの商品開発になっています。

 一人に対するデプスインタビューを通して、どこをどう切り取ったらストーリーを感じてもらえるか、共感を得られるかを探っているようなものですね。私たちは編集者の視点で、雑誌づくりをしているような感覚が近いかもしれません。生活者にとっては、既存ブランドもありながら、HOPPIN’ GARAGEもあることでサッポロビールとしてさまざまな提案ができていると思います。

MZ:最後に、メーカーとユーザーが価値をともにつくることの意義について、また今後の展望をお聞かせください。

土代:確実に、我々だけでは生み出せなかった価値を持つビールが誕生していると思います。また、それが購買されているということは、生活者にも価値を認めていただいているのだと考えています。

 ですから、当初思い描いた事業イメージに近づいている感触を得ています。社内にも、チャレンジングな取り組みで成果を上げることでいい影響を及ぼせたらと思います。

 そのためにも、直近では定期便の拡大を促進しつつ、一方で今後はもっと、オンラインでいかに共感の輪を広げるかを模索していきます。

 まだ眠っている一人ひとりのストーリーをもっと聞かせていただいて、「HOPPIN’ GARAGEが世の中にあってよかった」と思われる、愛されるブランドに育てていきたいです。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/06/28 13:12 https://markezine.jp/article/detail/36398

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング