自粛初期はバレンタインを超える製菓ブームが到来
次に登壇したのは、delyの渡邉拓磨氏だ。同社はレシピ動画サービス「クラシル」のほか、電子チラシサービス「クラシルチラシ」など、料理に関するサービスを提供している。主力事業であるクラシルはアプリ単体で3,000万を超える利用者数を抱え、ユーザーの9割を女性が占めているのが特徴だ。主に「料理前」「買い物前」「次の日の献立を考える時」などに利用され、クリスマスやバレンタインのような祭事や、旬の食材に基づいたコンテンツも発信している。
また同社では、ユーザーの検索・閲覧・利用データに基づき、主に食品・飲料メーカーを対象としたマーケティング支援サービスも提供している。

クラシルでは、1回目となる緊急事態宣言発令時(2020年3月)に検索数が200倍に伸長。さらに、変化があったのは検索数だけでなく、検索ワードにも社会情勢を反映した傾向が見られたという。渡邉氏は検索ワードのトレンドと、そこから読み取れる内食ニーズの変遷について時系列に沿って解説した。
日本国内における新型コロナの感染拡大が始まった2020年2月から3月にかけて「チーズケーキ」「クッキー」「プリン」などの検索数が伸び、「例年のバレンタインを超えるお菓子作りブームが到来した」と渡邉氏は振り返る。全国的な休校の影響を受け、子どもと一緒に作って楽しめる「ホットプレート」「ホームパーティー」レシピの検索も伸長した。
感染拡大が本格化し、人々の在宅率が高まってきた2020年3月以降は「簡単」「副菜」「時短」のニーズが高まった。また、調理家電の利用頻度が増加し、材料を投入して放っておくだけで料理が完成するレシピの検索数も伸長。delyはこの時期にアンケートを実施し、自炊に対するモチベーションや今後家庭で増えそうなレシピをクラシルユーザーに聞いた。渡邉氏はその結果を踏まえて「内食疲れや、先行きが不透明な情勢を考慮した節約志向を背景に、簡単レシピのニーズが高まったのでは」と分析する。

「お店の味を再現する餃子」のレシピが検索上位に
その後も、コロナ太りが話題となった2020年4月に「サラダチキン」や「鳥ハム」「オートミール」の検索数が伸長した「ヘルシーブーム」、日常生活が徐々に戻ってきた2020年7月に海外旅行ができない心理を反映して生じた「外国レシピブーム」などを経て、2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令された。
1回目の緊急事態宣言発令時は「簡単プリン」や「スフレパンケーキ」などのスイーツ需要が拡大したのに対し、2回目の緊急事態宣言発令時は「よだれ鶏」「やみつきチキン」「餃子」などのおつまみやおかずが急上昇キーワードの上位にランクイン。そんな中、いずれの時期においても検索されていたレシピが「お店の味を再現する餃子」だ。1回目の発令時は急上昇キーワードの4位に、2回目の発令時は6位にランクインしている。
渡邉氏はこの点をさらに掘り下げ、同レシピを閲覧している人に特徴的な検索傾向を探った。すると、野菜、特に「みつば」や「アボカド」などの比較的珍しい野菜をバイネームで検索するユーザーが多いことが分かった。この結果を受け、「お店の味を再現する餃子のレシピを検索している人は、こだわりが強く凝った料理に挑戦する傾向があるのでは」という仮説を渡邊氏は立てた。