目の前にお客さんがいると想像してみよう
四家
ユーザー視点を持たないことによる弊害は、Webサイトのデザインにどんな問題として現れてくるのでしょうか。
濱川
一番わかりやすいのは、購入・申込などのトランザクションが発生するWebフォームのページですね。
四家
買い物ひとつするのにえんえんとアンケートへの回答を強いるページですね。リアル店舗じゃありえないですよ。
濱川
「答えるまで精算しませんよ。あなたの年収いくら? どこでこの店を知ったの?」なんて、もはやサービス業とはいえませんよね。でも、Web上では「マーケティングリサーチ」という名のもとに堂々と行われていることです。
そんなことをしているサイトは、たいていユーザーの離脱率が高い。二度とアクセスしてくれなくなります。それなのに、機会損失が起きていることに気づいていないんです。
四家
でも、そんなことやってたら当然ですよね。
濱川
実際にユーザーは、必要のない試行錯誤を繰り返しながら、Webを使っていることが多いんです。Webをつくっている側の人間が、それをわかっていないだけです。ユーザーも当然自分たちと同じように簡単に使えていると勘違いしてしまうんでしょう。
四家
そこが目の前にユーザーがいるコミュニケーションとの違いなんですね。目の前にいなくても、たとえば電話だったら相手のニーズはある程度伝わるし。でもWebは言いっぱなしになってしまう。
濱川
でも、電話とWebは本質的にとても近いですね。多くのデザイナーはWebとグラフィックデザインを同じようにとらえてしまいますが、私に言わせるとそれはまったくの間違いです。本当は、電話のようなコミュニケーションを画面を通じてデザインするべきなんです。
四家
こういう問題って、実はアクセスログ見ればある程度はわかるんですけどね。
濱川
ボトルネックになるページはわかっても、どこに問題があるのか発見するのは難しいですよね。実際のお店では、お客さんがどう動いてどの棚のどんなものに興味を持っているのか調べられるのですが、アクセスログではそこまでわからないんです。
四家
確かにそうですね。「
後編では、企業Webとユニバーサルデザインについて、さらにお話をうかがいたいと思います。
「
株式会社はくばく」のページ。濱川プロデュースによるユニバーサルデザインの例。
デザインの美しさと、使いやすさが両立しているところに注目。
NHKのニュース番組「おはよう日本」で取り上げられたことも。
