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特集:ブランドの魅力が伝わる、戦略的な顧客接点

ブランド像のままに「力強く」挑戦し続ける イヴ・サンローラン・ボーテのメディア戦略

 ラグジュアリーなコスメブランド、というのは独特だ。使えばなくなる消費財であり、生活に必ずしも必要ではない嗜好品でもある。ラグジュアリーなブランドイメージを壊すことなく、ターゲットへのリーチを常に最大の状態にしておくというのは、なかなかの難題なのだ。そんな中、あらゆるタッチポイントを果敢に取り入れ、コミュニケーションを展開しているブランドがある。日本ロレアル傘下のイヴ・サンローラン・ボーテだ。ブランドのコミュニケーションを一貫してマネジメントしている野山佳世子氏に、イヴ・サンローラン・ボーテが注力している360度メディア戦略について話を聞いた。

※本記事は、2021年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』68号に掲載したものです。

取り入れられるタッチポイントはすべて取り入れ、フルで強化する

日本ロレアル株式会社 ロレアル リュクス事業本部 
イブ・サンローラン・ボーテ事業部 野山佳世子(のやま・かよこ)氏

 コミュニケーション マネージャー 外資系ラグジュアリーブランド、クチュール系ビューティブランドのプロダクトマーケティングやデジタルマーケティングPRを歴任。イベント、インフルエンサーを起用したSNSキャンペーンをビューティ業界ではいち早く取り入れ、手がけたイベントは100本以上。現在は、YSL BEAUTYのデジタルマーケティング、PRを担当している。

――はじめに、イヴ・サンローラン・ボーテ(以下、YSL)のセンスオブパーパスについて教えて下さい。

クリエイティブからYSLの描く力強い女性像を具体的にイメージできる
クリエイティブからYSLの描く力強い女性像を具体的にイメージできる

 YSLには、グローバルで決められている「YSL CREEATS DARING BEAUTY THAT DRESSES CHANGE.」という明確なセンスオブパーパスがあります。普段は伝える方によって様々な訳し方をしていますが、「時代の変化をリードし、大胆に力強く生きている女性の“美”を彩り、創造する」。これをYSLのブランド価値としています。

 コスメブランドは繊細な美しさや女性らしさを表現しているところが多く、ここまで力強い女性像を掲げているブランドは、なかなかないように思います。自由で自立していて、媚びることなく、自身の魅力で誰をも魅了するような“セクシーさ”“意志の強さ”を表現しているというのが、YSLの特異なところです。

――YSLは、YouTubeやTikTokなど積極的にタッチポイントを創出している印象があります。

 取り入れられるタッチポイントがあれば、すべてフルで強化していくというのが我々の基本方針です。どこかひとつのタッチポイントに注力するのではなく、360度、様々なところでお客様と接点がある状態を作りたいと考えています。

 現在消費者を取り巻くメディア環境は急速に変化しており、とりわけSNSは数年スパンで状勢が変わる時代です。一番怖いのは、その変化に置いていかれ、接触機会を失ってしまうこと。そしてその結果、消費者へのリーチ量が減ってしまうことです。

 ですので、新しいタッチポイントが出てきたら、なるべく早く取り入れ、果敢にチャレンジしています。最初はトライアンドエラーがあっても構わない。メディアとブランドとの相性や影響力を見極めてから本腰を入れるようでは、もう遅いと思っています。

――いずれのタッチポイントも社内で連携して展開されているのですか?

 そうですね。私はYSLのコミュニケーションマネージャーを務めており、店頭以外の、すべてのタッチポイントを一貫して見ています。3年ほど前までは、媒体ごとに組織が分かれており、すべてのタッチポイントで統一したコミュニケーションを展開するところに課題がありました。そこで、すべてをひとつの傘に入れる形に変えたところ、オンラインとオフラインでコミュニケーションを統一できるようになり、各接点でのメッセージの内容やタイミングもコントロールできるようになりました。今のチーム体制になってから、連携はスムーズになりましたね。

――多くのタッチポイントを取り入れられている中で、特に注目しているのはどこでしょうか?

 このところ、TikTok発のトレンドの強さを非常に感じています。我々が打ち出した施策でなくても、ユーザーの投稿で話題になって、オンラインでの売り上げが伸びたり、店頭への客足が増えたり、店頭でも「TikTokで見た」と商品を指名買いされたりするケースが多いのです。瞬発的な集客や売り上げにつながるのは、TikTokの影響力が急上昇中です。

 TikTokは、ユーザーの年齢層が若いため、ラグジュアリーブランドには向いていないのではという懸念から、手を出していないブランドもまだ多いと思います。ですが、我々は昨年の時点でTikTok活用のテストフェーズを終了しており、メインターゲットとしている20〜30代前半の女性にもしっかりリーチできることを確認できています。ラグジュアリーブランドとして、勢いのあるタッチポイントを使うというのも重要なことですので、今年からさらに力を入れて活用しています。

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この記事の著者

松崎 美紗子(編集部)(マツザキ ミサコ)

1995年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、新卒で翔泳社に入社。新入社員として、日々奮闘中です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/01 16:19 https://markezine.jp/article/detail/37019

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