コロナ禍でモーメントや購買サイクルに変化が
――お客様とのタッチポイントにおいて、今お話しいただいたようなブランドの提供価値をどのように表現していますか。
基本的なマーケティングの考え方は変わっていません。それはターゲットとなる潜在ユーザーや顧客層が、当社のブランドによるカテゴリーの新たな定義にアンテナを張る瞬間、つまり「自己表現をしたくなるモーメント」や「自己表現できると感じるモーメント」を捉えて、メッセージを発信していくということです。
ただし、当社のカテゴリーに対する購買サイクルが去年のコロナ禍から少し短くなってきていると同時に、月額サービスをキャンセルする人にも変化があります。それは、クリエイティブというカテゴリーが徐々に民主化され、副業として扱うことを検討する人が増えたことや、テレワークに見られるようなビジネスのデジタル化でクリエイティブの内製化などが進み、デジタル上のクリエイティブ表現が今まで以上に必要となっていること、並びにソーシャルメディアの台頭で、個々人が自己表現したいと感じる瞬間が増えていることに起因しています。そしてその領域の潜在ユーザーや顧客層は、仕事として割り切っている人もいれば、「自分自身が楽しめるか」ということを重視する人もおり、BtoCやBtoBといった区分けでは完全に捉えきれないのも事実です。
また、そうしたユーザー層のメディア接触についても注目しています。たとえばテレビだけでなく、ソーシャルメディアやネット上の記事やコンテンツなどに影響されることがわかっています。そして、テレビのみ視聴する人ではなく、ネットとテレビの両方を観ている人が多いこともわかっており、テレビコンテンツをネットで、ネットコンテンツをテレビで観ている人も増えています。PCでコンバージョンが起こる割合がまだまだ高い当社の製品カテゴリーの場合は、家の中(Living Room)で触れるすべてのメディア、つまりテレビとPCとスマホをコンビネーションで考えることが重要と言えるでしょう。当社ではこれを、Living Room Media Strategyと呼んでいます。