持続可能なビジネスの成立とパーパスの追求は両立できるのか?
パーパスドリブンな新規事業開発も、いよいよ市場へと漕ぎ出す段階になりました。「みらいのごはん」は、目先の売り上げよりも将来のための市場開拓、未来のためのブランディングというミッションを背負っていますが、それでも事業である以上P/L(Profit and Loss Statement、損益計算)の責任は負うことになります。
いつまでに、いくら投資して、いつ回収するのか? 未来のための投資とはいえ、事業会社にいるとなんだかんだいって毎年予算を作らざるを得ず、回収に最低10年はかかります、というような計画は相当の勇気とロジックがないと提案できません……。
なんとなく1年目でそこそこの結果を出しつつ、2~3年目ぐらいで黒字化できるぐらいだと安心できるラインである気がします(今後は脱炭素のように根本的かつ大規模なイノベーションが必要になってくるため、もっと野心的かつ長期的な投資計画が求められていくものと思います)。
製品の味などの機能価値はもちろん、原料やパッケージにもこだわりたい。という気持ちは、ブランド立ち上げ時に関わる人ならだれもが感じることかと思います。まして「みらいのごはん」は「子供のみらいを守り続ける」というパーパスを掲げたブランドです。このパーパスに忠実であり続けるためには、社会の持続可能性を高めるような考え方や行動を、隅々まで行きわたらせて実践していく必要があると、チームメンバーは考えました。
そのために、産地を応援して持続可能なサプライチェーンを作ろうと試みたり、子ども食堂の支援を行いながら顧客との対話を行ったり、できるだけプラスチックごみを出さないパッケージを開発しようと試行錯誤しています。
これらの試みにはそれなりのコストがかかります、何もかも妥協なく進められるのが理想ではありますが、理想だけでは続けられないのがビジネスの世界。そこでチームが考えたアプローチの一つが、すべてのプロセスを透明化することでした。
「Everlane」というアパレルブランドは、製品の原価や製造費など、すべての費用を公開しています。商品ごとの利益まですべて公開するだけなく、原料調達や環境負荷低減の目標と進捗状況なども逐次公開しており、これを「Radical Transparency」と呼んでいます。
一時期IT関連でよく使われていた「永遠のβ版」という言葉があります。パッケージ開発して終わりのソフトウェアビジネスから、永遠に改良しつづけるプラットフォームビジネスへの移行を表した表現ですが、パーパスドリブンな事業開発にも通じるものがあるように思います。
持続可能なビジネスを作り上げるのは、一筋縄ではいきません。高い理想を掲げているほど、最初は妥協の連続となることもありえます。また残念ながら、SDGsに掲げられている課題のすべてが、ビジネスの原理で解決できるわけでもありません。
元々経済成長の陰でおざなりになっていた社会課題がほとんどですから、経済優先のスタンスではどうやっても解決できないことだらけです。そのなかで、なんとか持続可能なビジネスとして成り立たせながら、ひたすらパーパスを追求する姿勢こそが大事なのかもしれません。
そのひとつの方向性として、今できていることだけでなく、できていないこともちゃんと明らかにしていくこと、そしていつまでに解決するという目標・姿勢を示し、進捗も公開していく、そのような透明性のあり方が、これからあらゆる領域で求められていくのではないでしょうか。
