CtoCアプリのマーケティングには「2軸の訴求」が求められる
大西:メルカリ時代の話になりますが、CtoCアプリならではの課題感として、購入者と出品者、モチベーションの異なる二者に対しての訴求が挙げられます。
購入者向けに商品を増やす戦略はもちろん、個人のクリエイターや農家の方といった、新しい属性の出品者が利用しやすい環境作りなど、双方に継続して利用してもらえるようなサービス設計が必要なのです。
2軸でアプローチするという意味では、現職で携わる美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」も同様と言えます。会員によって投稿される施術の経過画像と体験談を基に、ユーザーが自分に合った施術方法やクリニック、ドクターを検索できるサービスなのですが、「施術別にクリニックの選択肢がどれだけあるか」「クリニックがユーザーから選ばれるために、口コミや高評価をどれだけ獲得できるか」などを施策に落とし込むのが今後の課題です。
MZ:課題解決へ取り組むにあたり、これまでのキャリアから得た経験や知見がどのように役立っていると思われますか。
藤原:前職において、プロセス管理や投資対効果の分析を精緻に行っていた知見は、現職での課題解決に結びついていると思います。また、営業や事業管理などマーケティング領域以外の仕事を経験したことも大きかったですね。
たとえば営業の場合、テレアポや紹介など、複数の獲得チャネルからクロージングに向かうファネル構造を作ることができます。その構造から、各チャネルの投資対効果や営業リソースの投下について考えるのですが、これはマーケティングにおけるチャネル毎の予算ポートフォリオの考え方や、投資判断の進め方と非常によく似ています。
このように、前職ではファネル構造を理解し、「どの部分に着目すれば事業成果につながるか」という思考が養えたと思います。ROASを単純に捉えるのではなく、IRR(内部収益率)を指標として加え、投資回収のタイミングも考慮して投資対効果を議論できるようになりました
複数の事業において異なるフェーズを経験
大西:藤原さんのお話と重なりますが、「ファネル構造別にKPIのツリーを描く」という思考は、私も現職の課題解決に役立っていると感じます。
LINEでは、フェーズの異なる複数の事業に携わりました。「LINEバイト」は競合他社が先行する状況での後発でしたし、「LINEマンガ」は類似アプリが乱立する中、自社サービスの立ち位置の確立が必要でした。サービスとして既に成熟していた「LINEスタンプ」では、ユーザーの裾野を広げる戦略が求められる。複数の事業において異なるフェーズを経験したことが、自身のキャリアに最も活かされている部分だと感じます。
MZ:複数の業務や事業を経験されたことが、お2人の現職におけるご活躍につながっているのですね。Liftoffでは、大西さんや藤原さんのようにモバイル領域で活躍されているマーケターのコミュニティとして「Mobile Heroes」を運営されていると伺いました。天野さんから、このコミュニティの目的と具体的な活動内容について紹介いただけますか。
天野:Mobile Heroesは、アプリ業界でマーケティングに携わる方々のためのコミュニティです。主にブログを通じたナレッジの共有や、定期的なMeetupの開催によるネットワークの創出など、アプリ業界のさらなる発展を目指して活動を行っています。2015年に米国でスタートし、日本での活動にも力を入れているところです。