“Cookie代替手法”の考え方を終え、積極的な効果検証へ
現在第一線で活躍するマーケターの皆さんの中には、データドリブンマーケティングに取り組んでいる方がたくさんおられると思います。データ分析は、データを収集・整理・分析してインプリケーションを見出すものであり、客観的なデータである過去実績や事例をベースにして物事を評価・判断するという姿勢は然るべきものだと考えます。
自身としても、実績や事例の重要性は新興企業として特に強く感じているところで、自らの分野でひとつでの多くの成功事例を生み出そう・発表しようと躍起になっている部分はあります。ただ、今回の議論においては、まだまだ完全なCookieレス時代になっていない現在、パーフェクトな取り組みを体現した事例はないと考えています。
もちろん、前述の各アプローチそれぞれの範囲内においては有効な事例が出てきており、ファーストパーティーデータ活用や共通IDの可能性の検証についても優れた事例があるでしょう。私が携わるコンテクスチュアル広告に関しても、国内外で一定の成果が見え始めています。

特筆すべきは、こうした事例はまだまだ「点」であり、必ずすべてのケースに当てはまるものではなく、業種や目的・環境による振れ幅が非常に大きいということです。これらの成果は広告指標(ビューアビリティやクリック、サイト訪問結果、および実際の購買結果など)や、消費者調査(認知・好意・購買意向など)を踏まえたものではありますが、実際にユーザーがどんな広告体験をしたかについて、より深い調査分析が必要かもしれません。
また興味深いのは、複数のCookieレス手法を取り入れたマーケティング活動がどのような効果をあげるかであり、これは今後マーケターおよび広告事業者が共同で研究していくべきテーマです。マーケター・広告事業者すべてがCookieレスの動きに対して受動的に対応するのではなく、積極的にその可能性や効果を検証することこそが重要であり、“Cookie代替手法”としての見方はそろそろ終わりでよいのではと考えます。
第1回まとめ&第2回予告
第1回として皆さんにお伝えしたかったメッセージを、改めて以下の通りまとめたいと思います。
・Cookieレス時代に備える方法は、どれか1択ではない。すべてに可能性があり、複数アプローチの組み合わせにこそ、本当の可能性がある。
・現在の業界の議論は、残念ながら、プライバシー保護以外にユーザーのことを考えたものではない。本来最も大事にすべきユーザーにとっての広告体験を考える発想があるべきである。
・Cookieが使えないから人をターゲティングできないと絶望する必要はない。人そのものではなく、人の関心を捉えることは今後も十分に可能。
・事例ありきの発想は捨てよう。よりよい未来を考える際に過去の成功体験は必要ない。ただし、ここのアプローチにおける成功事例が「点」では存在している。それらをつなぐことで「面」としての成功事例を作ることを目指そう。
第2回では、私自身も携わるコンテクスチュアル広告について、その実績や内訳、メリット・デメリットをできるだけ客観的に解説したいと思います。