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1to1は付加価値ではなく絶対条件。P&GがLINE活用で目指す、これからの買い物体験

 POPやチラシなどで、店頭の顧客にアプローチするショッパーマーケティング。小売店各社もデジタルによる販促プロモーションに関心を高める中、P&Gでは「LINEで応募」を始めとしたLINEソリューションの活用を進めている。同社でショッパーマーケティングを担当する根岸太郎氏とLINEのOMO販促事業推進室の江田達哉氏に、両社の取り組みについて話を聞いた。

1to1コミュニケーションは付加価値ではなく絶対条件

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、P&Gのショッパーマーケティングの考え方を教えてください。

根岸:P&Gのショッパーマーケティングのミッションは、お客様が店頭で商品を手に取る瞬間「FMOT(First Moment of Truth)」を、小売店様と一緒により良い体験にしていくことです。そこから小売店舗様とP&G、両方のビジネス拡大へつなげていきます。

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 ショッパーマーケティング 東京2020オリンピック・パラリンピック ディレクター 根岸太郎氏
P&Gジャパン合同会社 ショッパーマーケティング 
MBCIマーケットストラテジー&プランニング ディレクター 根岸太郎氏

 P&Gでは、各商品ブランドのマーケティングを担う部署とは別に、このショッパーマーケティングを担当する部署が設けられています。ショッパーマーケティングを担当する部署では、P&Gの商品を購入いただくとオリンピックのチケットが当たるブランド横断型のキャンペーンを行うなど、小売店様と共同で様々な施策を展開しています。

MZ:P&Gは、テレビCMなどのマス媒体も含め、多様なマーケティングチャネルを活用されています。その中でLINEはどのような位置づけにありますか?

根岸:LINEはお客様と1to1コミュニケーションをする上で重要なチャネルだと考えています。消費財メーカーはお客様との直接的な接点が少なく、購買データが紐づいたデータを集めにくいという課題があります。その点、LINE公式アカウントではお客様と直接つながることができますし、CRM的なアプローチも可能です。

 情報があふれ、モノやサービスの選択肢が多様化している現在、ユーザーは自分により適した情報を求めるようになりました。これからのショッパーコミュニケーションにおいて、1to1アプローチは付加価値ではなく絶対条件購入体験をより良くするショッパーマーケティングにおいて、LINEは重要なプラットフォームですね。

MZ:リアルな買い物体験にも1to1コミュニケーションが求められているんですね。

江田:私たちLINEとP&G様が考える1to1コミュニケーションは、1,000人に1,000通りの異なる内容のメッセージを届けるのではなく、「その人に合った内容を、欲しいタイミングで、その人に最適な手段で届ける」というものです。

LINE株式会社 OMO販促事業推進室 広告・法人事業本部 室長 江田達哉氏
LINE株式会社 OMO販促事業推進室 広告・法人事業本部 室長 江田達哉氏

 LINEの月間利用者数8,900万人(2021年6月末時点)という圧倒的なユーザー数の中には、P&G様のメインターゲットである幅広い世代の女性層が多く存在します。詳細なターゲティングだけでなく、情報やサービスを届けるタイミングと手段を最適化していくため、共に取り組みを進めています。

継続的なつながりが持てる「LINEで応募」

MZ:では、取り組みの中でP&Gが活用している「LINEで応募」の仕組みを教えて下さい。

江田:「LINEで応募」は、誰でも簡単にLINEから応募が可能なキャンペーンプラットフォームです。従来デジタルを用いた販促キャンペーンでは、専用のアプリをダウンロードする、会員登録をしてIDやパスワードを入力するなど、少なからずユーザー側に負担を強いる仕組みが多い傾向にありました。

 対して、個人の認証が完了しているLINEを使った「LINEで応募」の場合、シンプルなプロセスでキャンペーンに参加できます。たとえば、「対象商品を購入した際のレシートを撮影して応募する」や「商品についているシールをめくり、QRコードを読み込んで応募する」といったように、流通や商品に合わせたキャンペーン設計が可能です。さらに、LINEのユーザーID単位で応募の有無や購入された商品がわかるので、後日キャンペーンに参加したユーザーとLINE公式アカウントでコミュニケーションできる点も特徴です。

MZ:今回P&Gが「LINEで応募」を採用された狙いは、どのようなところにありますか?

根岸:大きく2つの理由があります。1つ目は、LINEポイントというデジタルインセンティブに販促手法の有効性を感じたこと。2つ目は、応募に参加されたお客様とコミュニケーションが取れることです。コミュニケーションツールとして浸透しているLINEを通じて、ユーザーとつながることができる点は、大きなメリットだと考えました。

商品の購入有無で「友だち」のブロックレートに違いが

MZ:続けて、実施されたキャンペーンの概要を教えて下さい。

根岸:今回実施したのは、対象の商品を購入されたお客様に「LINEで応募」からレシートを撮影して応募していただき、LINEポイントを付与するキャンぺーンです。

MZ:お客様に新しい商品を使ってもらうきっかけも創出しているんですよね。

根岸:はい。キャンペーンをきっかけに高付加価値商品の使用感にご満足いただき、その次の買い物でも購入の選択肢に入れていただくことをイメージしています。お客様、小売店様、そしてメーカーの全員が良い体験、ビジネスにつなげられるようキャンペーンを設計しました。

MZ:キャンペーンには、どのような反響がありましたか?

根岸:これまでハガキとWebで行っていたキャンペーンと比べ、短期間で多くのお客様にご参加いただきました。「LINEで応募」の参加ハードルの低さ、LINEポイントというインセンティブの魅力も実感できました。

 また、LINEプロモーションスタンプやエントリーのみでポイントを付与する他のキャンペーン経由で獲得した友だちと比べ、商品購入を前提としたキャンペーン経由で獲得した友だちは、その後のブロック率が低い傾向があります。実際に商品を購入し、使っていただいているからこそ、ブランドや今後のプロモーションへの関心も高いのではないかと考えています。

小売側でも高まる、デジタルプロモーションへの期待

MZ:キャンペーンでつながったユーザーとは、その後どのようなコミュニケーションを行っているのですか?

江田:たとえば、キャンペーンの参加履歴を基に、次回以降のキャンペーンのアナウンスを行っているほか、キャンペーンにエントリーいただいたユーザーに対して、対象となる小売店に近づいたタイミングでリマインド配信を行うような取り組み(※)も実験的に開始しています。

MZ:ショッパーマーケティングは、小売店と共同して取り組むことが重要と伺いました。小売店側では、「LINEで応募」に対してどのような反応がありましたか?

根岸:近年、小売店様もデジタルプロモーションへの関心を持たれています。「LINEで応募」に関しても、販促効果だけでなく、蓄積したデータを集客や小売店様の運用するアプリの利用促進に活用するなど、お客様との関係性を深めるビジョンにとても共感いただいています。

 売り上げへの貢献という点では、まだ折り込みチラシなどの伝統的な手法も大切ですが、その効果が少しずつ弱まっていることは事実です。小売店様もお客様にも満足いただき、ビジネスを伸ばすアプローチとしてデジタルの必要性を実感されているのだと思います。

MZ:LINEでは、かねてからOMO施策に力を入れていらっしゃいます。企業や小売店の変化は感じていますか?

江田:そうですね。これまではハガキとLINEによるキャンペーンを併用されていた企業様が、LINE単独でキャンペーンを実施されるケースも増えてきました。LINE全体のユーザー数8,900万人から見ると、伸びしろはまだまだあります。店舗起点でお客様とつながる機会をより創出できると期待しています。

(※)「位置情報の取得を許可」をオンにしているユーザーに対してのみ配信が可能。

メーカーと小売、プラットフォームの協力体制を強化し1to1を促進

MZ:「LINEで応募」の実施を受けて、これからどのようなデータ活用を進めていきたいですか?

根岸:今後、メーカーとしてのデータ活用は大きく2つの方向性で強化したいと考えています。1つは、小売店様との協働です。これまで、小売店様からは分析用の購買データをご提供いただき、カテゴリーマネジメントを行ってきました。今後は、お客様へ直接アプローチできるような形でデータを活用していきたいです。

 そして2つ目は、LINEさんをはじめとしたプラットフォームとの連携です。個々のショッパーに対してアプローチできる仕組みを整えたり、効果的にリーチできるようなソリューションも一緒に作っていきたいと考えています。

MZ:これからますますメーカーや小売店の中で1to1のデータ活用が進んでいくと思われます。LINEでは、これをどのようにサポートしていかれますか?

江田:P&G様とのお取り組みのように、メーカーとショッパーが直接つながる仕組みを提供するとともに、各リテール事業者様へソリューションを提供する「リテールパートナープログラム」でも支援を強化していきます。

 2022年1月以降にリリースを予定している「LINE POP Media」は、来店客をLINE Beaconでキャッチし、店内にいるユーザーへLINEから情報を発信するという仕組み(※)です。ユーザーが店内にいるタイミングで、キャンペーンなどのお得な情報を届けることができます。最適なタイミング・最適な手段で発信できるよう、さらにブラッシュアップを重ねていきたいです。

2022年1月に正式ローンチ予定の「LINE POP Media」
2022年1月以降に正式ローンチ予定の「LINE POP Media」

(※)「位置情報の取得を許可」をオンにしているユーザーに対してのみ配信が可能。

より楽しいトータルショッピングジャーニーの実現へ

MZ:終わりに、今後の展望をお聞かせください。

根岸:P&Gでは、お客様の買い物の流れを「トータルショッピングジャーニー」と呼んでいます。買い物をする前・買い物の最中・買った後と、複数の接点でショッパーにより良い情報やサービスをご提供し、トータルショッピングジャーニーをより楽しく、進化させていきたいです。

 コロナ禍を受けてECが伸びていますが、お店に買い物へ行く楽しさを再発見されているお客様もいらっしゃいます。オフライン、オンラインとどちらのチャネルも活用しながら、買い物の時間をより良い時間にしたいと考えています。

 そして、私たちP&Gの「毎日の暮らしをよりよいものに」と、LINEさんが生活を支えるインフラとして目指している「Life on LINE」のビジョンには共通するところが多いと感じています。ぜひ、これからも長期的な取り組みを続けていきたいです。

江田:「ブランド価値をどのようにエンドユーザーへ伝えていくか?」を考えた時、キャンペーンに応募するといった体験も含めた買い物体験がより重要な要素になっていくだろうと実感しています。また、先日実証実験を行った「NFTを活用した新たなデジタル景品」の取り組みも含め、ワクワクするような買い物体験をお届けするため、引き続き「LINEで応募」やLINEの販促領域の様々なソリューション、テクノロジーを活用し、P&G様をサポートしていければと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/05 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37185