デジタル化により、ATLとBTLの概念がなくなった
デジタル化によって広告・プロモーション領域に起きた最大の現象は、アバブ・ザ・ライン(ATL:above-the-line)、ビロー・ザ・ライン(BTL:below the line)という概念がなくなったことではないかと思います。
スルー・ザ・ライン(TTL:through the line)という概念も徐々に浸透していますが、ブランディング活動とプロモーション活動は別物で、担当部門も違うという思考はもう旧世代のものです。
一方、ブランドマネージャー制度は日本でもかなり普及してきました。売上・利益責任は事業部にあり、ブランドのマーケティング活動の予算執行権限は事業部のブランドマネージャーにあるという会社は増えました。結果、宣伝部には予算はなく、ブランドマネージャーから広告の買い付け依頼を受けるスタイルが多くなったと思います。
この仕組みだと、基本的に広告プロモーション活動のアロケーションはブランドマネージャーの役割になります。スルー・ザ・ラインで全体予算を配分しないといけない訳です。しかしながら日本企業の事業部のブランドマネージャーには、広告領域の知見が少ないので、どうしてもマス広告などのプランニングやバイイングは宣伝部に丸投げになりがちです。
そういう状況では、広告・プロモーションにおける予算配分の最適化は難しいのです。ブランドを販売する主体の事業部およびそのマーケティングの司令塔であるブランドマネージャーと、広告の買い付け役である宣伝部との、共通指標が必要なのですが、以前からそこに問題点が多くありました。
GRPはマーケティング指標ではない
特にテレビを中心とした広告量の指標は、従来「売り手の指標」で「買い手の指標」ではありません。ずっと売り手市場であったテレビ広告で扱うデータはほとんど「売り手」主導のものです。
その最たるものがGRP(Gross Rating Point)です。この「率を足し上げる」というよく考えると奇妙な指標は、買い付け指標ではあるものの、プランニング指標ではなく、ましてやマーケティング指標ではありません。パーセントで語るのは、母数である人口が減っていないこと、また世の中のほとんどがテレビを視聴していることが前提です。
しかし、若年層の人口は激減している。現在のF1/M1層は20年前の3分の2になっています。同じTARP(Target Audience Rating Point)でも人数は3分の2であるのに、まったく同じ数値として扱っていますが、これを事業部は受容できるものでしょうか。単価いくらの自社ブランド商品が、何人に買われて、いくら売り上げるかを計算する事業部サイドにとっては、絶対数値によって投下量を把握することは必然でしょう。事業責任を負う事業部としては、宣伝部にテレビなどの広告の投下実態を事業部としてメイクセンスする指標(共通指標)にするよう強い要請をすべきです。