まだ“未知数”の領域があることを理解しておこう
これまでお伝えしてきた通り、「コンテクスチュアル広告」はターゲティングにおいて大きな可能性を示すものですが、一方でその広告効果やコスト効率はまだ世界的にも検証が十分に行われていないことを理解する必要があります。当然、先進的なテクノロジーの利用にはそれ相応のコストがかかるのが現実で、費用対効果の検証はこの分野における大きな課題です。

また、広告効果の評価の仕方一つとっても、従来の追跡型ターゲティングと比べてどうなのか、広告に対するユーザーの反応や態度変容の調査、脳科学・心理学的見地からの効果検証など、様々な試みが行われています。しかし、すべてのマーケターが納得できるだけの材料が十分に揃っているとはまだ言い難い状況です。当然、コンテクスチュアル各事業者は、自らの技術・手法に確信をもって推進しているわけですが、この部分を明らかにできない限り、マーケターの皆さんが本当に納得して利用できるものにはならないと思います。加えて、過剰な負担なく導入するにはどうすればよいか、そのガイダンスやベストプラクティスに関する情報が足りていない点も指摘しておく必要があります。
このように未知数が残されているものの、業界全体で“Cookieレス手法”の一つとしてコンテクスチュアル広告の採用が増えているのもまた事実です。その中で、新たな“付加価値”を加えることにより、より確実なコンテクスチュアル手法を確立しようとする動きがあります。
たとえば、“コンテクスチュアル+ファーストパーティデータ”によるターゲティング効率の追求、“コンテクスチュアル+広告フォーマット”によるより良い広告体験の追求、“コンテクスチュアル+プレミアム配信面”によるブランドイメージの訴求などです。これまで追跡型ターゲティングにおいても、こうした手法の組み合わせは行われていましたが、従来のオーディエンス・行動ターゲティングが人の“属性や過去の行動”に注目するものであるのに対し、コンテクスチュアルは人の“リアルタイムな関心”に注目したものである、という点に意識を向けることが必要です。人を追跡することが難しくなった時代でも、“誰”に対してメッセージを届けたいか考えることはできますし、そうすべきだと考えます。
コンテクスチュアルにおいて重要なのは、人間同士のコミュニケーションと同様に、“どの瞬間・状況で”“何を伝えるか”であり、これを設計段階で十分に吟味する必要があります。この発想を持たず、既存のターゲティングの単純な置き換えとしてコンテクスチュアルを“はめ込む”と、まず思うような効果を得られることはないでしょう。私が“代替手法”としての考え方を終えるべきだと主張するのは、この点に起因するところとなります。
第2回まとめと第3回予告
第2回では、以下のメッセージをお伝えしました。
・「コンテクスチュアル広告」とは、ユーザーが置かれた文脈・背景・状況を踏まえて広告を行うことで良好な広告体験・効果を生み出すことを目指すものである。
・デジタル広告としての「コンテクスチュアル広告」だけを見てもいくつかの種類があり、それぞれが今後も十分に活用できる可能性がある。
・「コンテクスチュアル広告」の効果や活用方法には未知数が残されている。明確なのは、追跡型ターゲティングの代わりであるという考えは捨てるべき。
第3回では、今回課題が残されているとお伝えしたコンテクスチュアル広告の評価方法や導入・運用の仕方について、ポイントを整理したいと思います。