ヲタ活の熱量が消費の強いモチベーションに
(3)応援消費・親近感消費
3つ目は「応援消費・親近感消費」。アーティストやアニメ、マンガなど、自分の好きなものに対して応援する気持ちでお金を使う「ヲタ活」がわかりやすい例だ。2021年に実施したSHIBUYA109 lab. の調査でも、7割以上のZ世代が「あなたは自分が『ヲタ』と言えるものはありますか?」という質問に「ある」と回答。今のZ世代にとって、誰か一人は「推し」がいる状況がスタンダードなのである。
ヲタ活に紐づく消費は、公式グッズを購入したりコンサートに行ったりするだけではない。その熱量が様々な消費のモチベーションとして働き、実際の消費行動とその拡散につながっているという。たとえばK-POP好きが高じて韓国語を勉強し始めるなど、自己研鑽のモチベーションになったり、周囲が「K-POPが好きなのだな」とわかるほど、ファッションに影響を及ぼしたりもする。さらに話題のカフェに推しの写真を持参して一緒に写真を撮るなど、常に推しを感じながら生活しているZ世代もいる。
「応援消費を極めて具体化したのがヲタ活です。そのため、単にアーティストとコラボをして単発で“ヲタ活需要”を捉えようとしても、なかなかうまくいきません。何が熱量の根底にあるのか、何に価値を感じているのかを理解した上で、商品開発などに活かしていくことが大事だと考えています」(長田氏)
(4)メリハリ消費
そして4つ目が、長田氏が「最も注目すべき」と述べるZ世代の消費価値観「メリハリ消費」だ。自分が価値を感じるものには惜しみなくお金と時間を投資し、あとは切り詰めて節約する姿勢を指す。「お金をかけたくない部分は、財布の紐が固くなります。1,000円の商品を800円で買う“節約”より、その商品に『価値を感じるか』と吟味し、悩み切る時間を設けるほうがよりよい節約手段と考えるようです。衝動買いや浪費にネガティブな意識を持ち、そうならないよう自制しながら情報に接する様子が見られます」と長田氏は考察する。
来店前には「だいたい心が決まっている」
上述の4つの消費価値観を持ち、SNSを複数使いして情報を得るZ世代。では、その購買チャネルはどこなのか。現在はコロナ禍でリアル店舗の利用は減少傾向だが、コロナ禍以前は、8割がリアル店舗で購入していた。「コロナ禍が落ち着けば、おそらくリアル店舗に若者が戻ってくるでしょう」と長田氏は推察する。その理由はやはり「失敗したくない」からだ。必ず実物を見てから買いたいという気持ちが、リアル店舗の利用につながっている。
より詳しく見ていくと、SNSとリアル店舗を往復して、Z世代は購入するものを決めていく。たとえば洋服を買うときは、まずSNSで入念に調べ、何を購入するかを絞り込む。そしてリアル店舗に出向いて実物を手に取り、「本当に自分に合うか」「SNSのクチコミ通りか」などを確認。それでもすぐには買わず、一旦帰宅。帰宅後は再度クチコミを見たり友達に相談したりすることを繰り返す。ブランドへのこだわりは少ないので、他のブランドの類似商品もチェックして最善を探すのだ。

長田氏は「お店に行くときにはだいたい心が決まっていること、下見に時間をかけることが特徴です。そのため企業としては、お店で接客する前の段階できちんと接点を持つことがとても重要になります」とアプローチのコツを挙げた。
セッションの後半には高校生と大学生のゲストが登壇。長田氏がモデレーターとなり、ここまでのトピックについてリアルな様子を聞き出していった。以下ではその様子をダイジェストでお届けする。
