インサイトの先読みに有効な「カルチャー」分析
はじめまして。TBWA HAKUHODO Backslashチームの藤田と申します。変化が激しい今の時代、「これから消費者インサイトはどのように変化していくのだろう」という疑問を持つマーケターの方が多いのではないでしょうか。
TBWAでは、社会変化の兆しを捉える取り組みとして「Backslash(バックスラッシュ)」という活動を展開し、世界各国70以上のオフィスにいる300名以上の調査員が、各地で起こっている変化を象徴する事象を捉え、その根底にあるカルチャー(時代の価値観)を明らかにするシンクタンク的な分析活動を行っています。
「カルチャー」という言葉を、私たちは人々が共感・共有する「時代の価値観」と捉えています。マーケティング用語でターゲットの顕在化した欲望である「ニーズ」に対して、潜在的な深層心理を指す「インサイト」があり、「カルチャー」はこのインサイトのさらに根底にある、人々の潜在意識の集合体やその意識の向く先を司る意識の流れのようなものです。そのため、カルチャーを捉えることが、その先に起こるであろうインサイト変化の予測につながる、と考えています。
本連載では具体的な事例をもとに、カルチャー分析のための手法として用いている「Connecting the Dots(コネクティング・ザ・ドット)」をご紹介しながら、変化しつつあるカルチャーやそれがインサイトに与えそうな影響について、読者の皆さまと一緒に考えていきたいと思います。なお、「Connecting the Dots」は、スティーブ・ジョブス氏のスピーチやマーケティングの世界でも用いられる有名な言葉ですが、それらとは別の概念としてご理解いただければと思います。
カルチャーを捉える手法「Connecting the Dots」法とは
「Connecting the Dots」は2つのステップで構成される、とてもシンプルなプロセスです。
STEP1:流行情報(Dot)を集める
ヒット商品、流行語、話題になっているハッシュタグ、検索トレンド、業界ニュースなど、世の中にはさまざまなトレンドがあります。これら一つひとつの流行情報をDot(ドット)と呼びます。Dotは、カルチャーを捉えるための重要な材料となるので、私たちマーケターは日頃からDotの引き出しを充実させておきたいところです。
STEP2:複数のDotをつなげて共通項を探る
カルチャーを捉える上で重要なのは、複数のDotをつなげて共通項を探ることです。一見すると無関係に見える世の中の流行であっても、同じ時期に発生をしているということには何らかの意味があるはずです。
業界、カテゴリー、地域、世代、思想、立場などいくつかのジャンルを超えて同時期に発現したDot(流行)にどんな意味があるか? を考えていくと、根底に流れるカルチャー(時代の価値観)が見えてきます。