多言語化対応は“今後のCX/EXの価値向上の起点”
サイトの多言語化は、仮にマーケットが海外にない場合でも、在留外国人ユーザーの体験価値を向上するメリットがある。日本人と同様に母国語で日本のサービスが受けられるようになるのだ。また、早坂氏は顧客となるユーザーだけでなく、外国人従業員のEX(従業員体験価値)の向上も見込めると述べる。
「オンラインシフトに対応するためには、まずは前提として顧客とのタッチポイントやコミュニケーションの最適化を図り、そこで取得できる様々なデータをエコシステムにつなぎ合わせること。これにより、ビジネスの成長度合いに見合うCXの拡張性が担保できます。
それに加え、様々な人や言語、文化を考慮した顧客との関わり方をオンラインで実現させることが重要だと考えています。国が違えば考え方も商習慣も異なる中で、多言語化対応を起点にそれぞれ最適化を進めていくということが、これからのCXやEXとの向き合い方だと弊社では考えています」
多言語化の壁は“たった1行”で乗り越えられる時代に
Webサイトの多言語化によりビジネスのグローバル化の推進や外国人従業員向けのコンテンツの充実など様々な価値がある一方で、実際に自社のWebサイトの多言語化を検討したとき、サイト構築や翻訳といった様々なハードルを感じる担当者も少なくない。
従来であれば、日本語の元サイトを複製し言語別に翻訳したコンテンツでWebサイトを制作していく。そして、更新のたびに各言語別のサイトの保守・運用が発生する。また、翻訳のコストも言語ごとに発生することが障壁になりうる。
早坂氏はその解決手段としてWovn Technologiesが開発するWebサイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を紹介した。
「WOVN.ioはWebサイトを多言語化するソリューションです。たった1行のスクリプトを共通ヘッダに挿入するか、Webサイトにライブラリとして導入することで、元言語データを吸い上げて機械翻訳をかけ、多言語化することができます。
言語別のサイト開発は不要であり、言語ごとの翻訳コストも圧縮可能です。翻訳内容の確認やブランディングの観点で表現の調整などの体制は必要となりますが、ゼロから翻訳するコストがかからないというメリットもあります」
WOVN.ioは、既に国内でも導入事例が多数ある。本セッションではその一部を紹介した。
活用事例(1):ヤンマーホールディングス
ヤンマーホールディングスでは、ブランドガバナンスの徹底を目的にWOVN.ioを導入している。同社はグローバルでの認知度向上やブランド力強化を目指す上で、各国別のWebサイトのコンテンツ不足に課題を感じていた。そこで、一元的に多言語情報を管理すべくWOVN.ioを導入し、各国サイトの翻訳業務の効率化に成功。国別のグローバルサイトに加えて、社内イントラネットの多言語化までを短期間で実現でき、全グローバル拠点での情報発信の強化と、情報の公平性・平等性の担保という効果を得た。
活用事例(2):三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行では、増加する外国人の顧客に向けたCXの価値向上という観点から多言語化をすべくWOVN.ioを導入。同社のインターネットバンキングサービスである「三菱UFJダイレクト」にWOVN.ioを導入することで、莫大な開発リソースをかけることなく迅速に多言語化を実現した。在留外国人ユーザーの利用シーンに見られる「日本語での会話に支障はないが、複雑な金融サービスの情報を読み書きする自信がない」といった課題の解決に役立った。
国内のコミュニケーションが優先され、後回しにされがちだったコンテンツの多言語化。新しい生活様式が広まり、オンラインシフトが本格的に進んだ現在は、コンテンツの多言語化、ひいてはグローバルビジネスの推進を検討する契機にもなっている。