データ連携・AI技術の普及がもたらした“One to One”
早坂氏が3つ目の変化として挙げたのは「テクノロジー」の変化だ。CXを最適化するために画像認識やOCR、自然言語処理などAIを活用するシーンが増えてきている。金融業であればAIの不正検知システムが被害削減に貢献しており、医療業界においては人間の目視では発見が難しい症状を画像認識技術によって検出を行うといった事例がある。
こうしたAI技術の普及はBtoBのビジネスシーンにおいても普及しており、早坂氏はコミュニケーションの変化でも挙げたチャットボットツールを例に、利用シーンを説明する。
「既に利用されている方も多いと思いますが、自動応答による無人対応などが挙げられます。顧客情報をDMPなどに蓄積し、そのデータを基にMAツールへ反映させ、最終的にチャットボットツールとつなげるなど、全てのデータが接続されたエコシステムにより実現できる仕組みです」
限られた時間の中で顧客とのコミュニケーション時間を有効活用するためにテクノロジーが活用され、現在では顧客情報を基にしたOne to Oneでのコミュニケーションもチャットボットツールで可能になっていると語った。
まず取り組むべきは「コンテンツのオンラインシフト」
顧客とのタッチポイントやコミュニケーション、テクノロジーの変化によって、まず企業が対応すべきはコンテンツのオンラインシフトであると早坂氏は述べる。
「Webサイトで企業が発信すべき情報や企業のビジョンやミッションといった理念の表現、サービス紹介やFAQの充実など、コンテンツのオンラインシフトに取り組めているでしょうか?
製品マニュアルや営業ナレッジ、FAQなどをPDFではなくWebコンテンツ化することにより、どういったコンテンツにアクセスがあるのか、場所や企業情報といったデータが取得できるようになります」
加えて、情報発信のリアルタイム性の向上や、さらに必要なコンテンツの分析といったことにも活用できると強調。またビジネスの機会を国外に拡張できるメリットも提示する。
「オンラインシフトには様々なメリットがありますが、そこで作成したコンテンツにアクセスするのは日本人だけだと考えていないでしょうか? あるいはグローバル化の潮流から、なんとなく英語への対応だけを行っていませんでしょうか?」
早坂氏はサイトの言語対応をオンラインシフトの課題として提起し、その裏付けとなる調査データを示した。
ニールセンの調査データによれば、世界のインターネット利用人口の中で日本語を利用しているユーザーはわずか3%程度。そして、英語のユーザーは25%、そして、非英語圏の7言語が46%を占めている。世界の主要な150サイトは平均33言語をサポートしていると言われており、これらのデータから早坂氏は「オンラインシフトに加えて多言語化への対応がビジネスを成長させる上で重要だ」と語る。
「Eurobarometerのアンケート調査によれば、19%のユーザーはWebサイトを閲覧したことがなく、言語の選択肢がある場合であれば9割のユーザーが母国語で閲覧することを好むというデータがあることがわかります。さらに、42%のユーザーはECサイトなどにおいて母国語以外のサイトでは購入したことがないという回答結果がでています」
言語の壁の排除はビジネスをグローバルに広げていくことにつながる。そして、言語の壁による情報格差を失くすことは「人や国の不平等をなくす」というSDGsの10番目の目標へとつながると早坂氏は語った。