自分を「#ワーキングマザー」でくくらない。マーケティングで意識していること
志賀:女性マーケターが産後どのようなキャリアを歩んでいくのか、あまり前例がなく悩まれている方もいるようですが、当事者になってから視野が広がり、より物事への理解が深まることもありますよね。ライフイベントが女性マーケターとしてひとつの強みになり、仕事にプラスに働く部分はあると私自身も実感しています。お二人はいかがですか?
半澤:私は自分に「ワーキングマザー」というハッシュタグをつけないように気を付けています。独身だった時、パートナーと同棲していた時、結婚して子どもが欲しいと思っていたけどまだ授かっていなかった時。一つひとつのプロセスを自分の中でプロファイルとして持ち続けて、様々な状況にいる人と対話できる状態を作った上で、「たとえば、働く母として持っている課題はこんなものがあるよ」と共有するように意識しています。
志賀:とても大事なことですよね! いろんなライフステージのペルソナをイメージできるのも女性マーケターの強みかもしれません。ビジネスにおいて、未婚既婚や子どもの有無などは関係ないと思いますし、マーケティングに関しては、もちろんブランドや商品のターゲットはありつつ、一つひとつのコミュニケーションで誰かを排除しないようにすることは大事ですよね。
半澤:そうですね、その点はとても注意しています。また、お母さんが購買対象のブランドや商品のプランナーは女性が担当するケースが多いですが、これにはとても違和感を抱いています。私は自動車や石油、エネルギーの領域もやっているのに、なんで女性側の領域には男性が少ないんだろう? と。データ分析や企画力でマーケティングをやることに変わりはないですよね。
加藤:たしかにそうですね。以前は自分の目標達成に向かっていたところがありましたが、先ほどもお話ししたように「より良い世界を作るために自分に何ができるのか?」と広い視野で物事を考えて、自分の仕事に落とし込んでいくことができるようになりました。自分の中での考察や議論が本質的になって、気持ちも楽になった気がしています。
あとは、子どもにたくさんの選択肢を与えるために私自身グローバルな視野を持たなければならないと考えたことも、資生堂への転職に繋がっています。資生堂に入り、グローバルブランドの担当になってから、英語の勉強も始めました。TOEIC400点くらいから始めましたが、海外の同僚となんとかコミュニケーションが取れるようになるまでになっています。
多様性を認め合い、みんなが働きやすい・生きやすい社会へ
志賀:広告・マーケティング業界はハードワークな印象もありますが、お二人には自身のキャリアをポジティブに切り開いていく行動力を感じました。育児と仕事の両立を図ることはもちろん、物理的な制約がある中でも、産後のキャリアを発展させていくことに不安を感じている方もいるかもしれません。私自身も当初不安はありましたが、実際に仕事をしてみると、出産前と特に変わらないとも思います。
加藤:私も子どもを産んで復帰するまでは、「大丈夫かな……」ととても不安でしたが、意外と大丈夫なんですよね。皆さん支えてくれますし、子どもがいることが足かせになるようなことは決してありません。もし悩まれている方がいたら、ポジティブにプラスに考えてほしいなと思います。あと、特にお母さんは健康に気を付けて下さいということをお伝えしたいです。出産してから何年かずっと調子が悪かった気がしていて……。まずは自分と家族の健康が第一ですからね。
半澤:子どもを育てながら働く大変さではなく、多様性に目を向けていくことの大切さを皆さんとシェアしたいです。子どものいる人でも考え方や価値観は様々ですし、子どものいない人にも同様にいろいろな考え方があります。違う考え方の人がいたら、それは素敵な出会いだと思って、マーケティングにもプライベートにもプラスに変えていけるように、みんなで思い合えたらいいなと思います。
志賀:本当にそうですね。働き方やライフプランに関する価値観は人それぞれですが、その多様性をみんなで思いやりを持って受け入れられたらいいですよね。
私は、女性がライフイベントに左右されず、当たり前に自分のキャリアを歩める社会になれば「女性活躍」という言葉自体なくなっていくのではないかと考えています。今日はマーケターとしての産後のキャリアやライフプランに不安を抱えている読者の方々に勇気を与えられるお話しがたくさんありました。加藤さん、半澤さん、ありがとうございました!