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BtoBマーケティングの開拓者たち

【実践編】BtoB×SaaSにおけるPR・ブランディング戦略

施策を実行する前に、マーケ・PRで共通メッセージを策定

田中:続いて最近のお取り組みについてうかがいます。2021年はPR・ブランディング施策をこれまで以上に強化されているとのことですが、ご様子を教えてください。

藤原:はい。「TeamSpirit EX」という大企業向けの新プロダクトを3月に発表したことと、TeamSpiritの提供開始から10周年にあたる年ということで、全社的にPR・ブランディングを強化しました。

 様々なプロジェクトを実施する前に、マーケティングチームとPRチームで「イノベーションを創造させる働き方改革」というメッセージを作り、すべての施策をこれに基づき設計するようにしました。発信するメディアや提供する体験は様々であっても、統一感を持たせることができるようになり、本当に良かったと思っています。

田中:メッセージが統一できていないと、受け手のメディアさんもそうですし、その先の読者・視聴者が持つ印象もばらついてしまいます。そうならないように社内横断でコンセンサスを取って届けたい価値を言語化し、それを施策に反映されている点がポイントですね。

BtoBの“三重苦”にどう向き合うか?

田中:続いて、具体的な施策について教えてください。

藤原:それぞれの施策を開始する前に、ずいぶん考えました。というのも、私は前職でBtoC向けの商材を扱っていましたが、それに比べてBtoBのPR・マーケティングは難しいと思う点がいくつかあるんです。1つは発信する材料が少ないこと。当社もTeamSpiritとTeamSpirit EXの2つのプロダクトしかなく、かつそれぞれのアップデートも年に数回程度です。するとプレスリリースは2,3ヵ月に1本、という状況になってしまいますよね。これがBtoCですと、キャンペーンやバージョンアップがもう少し頻繁に行われています。

 2つ目にステークホルダーが複数いることも、BtoBの特徴です。当社の場合ですと、たとえば「勤怠システムを入れ替えよう」というときに、システムの選定をする方と決裁をする方、実際に勤怠打刻をする方が、全部別々です。3つ目に、コミュニケーションが長期にわたることがあります。BtoBの商材では「ちょうど買いたいと思っていました」というケースはほぼなく、次年度やその先まで検討が続く場合もあります。その間、忘れられないように継続的にフォローをし続けなければいけない点が難しいですね。

田中:同じ悩みを抱えているBtoBのマーケター、PRパーソンも多いと思います。どのように解決されていったのでしょうか。

藤原:発信材料が少ないということに関しては、PRチーム側で継続的にネタを作れる環境を整えて、そのための予算も確保しました。具体的には、オウンドメディアを立ち上げてそこに紐づく調査機関「イノベーション総合研究所(WITH)」(図表1)を設立。

図表1 チームスピリットのオウンドメディア「WITH」
図表1 チームスピリットのオウンドメディア「WITH」

 調査結果をプレスリリースとして発信し、メディアの皆さんに取り上げていただいたり、記事化してオウンドメディアに掲載したりすることで、継続的な話題化を狙いました。他にも、早稲田大学大学院ビジネススクールの入山章栄教授、ユニリーバ・ジャパン取締役人事総務本部長の島田由香さんをお招きし、「イノベーションを創造させる組織と個人の在り方を考える」というテーマでセミナーを開催するなど、PR側でコントロールできる領域を増やすようにしてきました。

田中:連載の第2回でPR実践のステップについて紹介したのですが、まさにそのような取り組みを続けていらっしゃるのですね。2つ目の、複数のステークホルダーへのコミュニケーションという観点ではいかがですか。

藤原:この発信は管理者向け、この発信はエンドユーザーである従業員の皆さん向け、と明確に意識するようにしていました。ラジオや雑誌記事から、WebやSNSキャンペーンまで、かなり幅広く活用しましたね。

 少々細かい話になりますが、アプローチの仕方は企業規模によっても変わると思っています。たとえば中小企業のお客様ですと、勤怠システムを決定する人事部の方向けに即効性があるお話をする、大企業向けですと、もう少し中長期のコミュニケーションを想定して、ソートリーダーシップ的なお話から入っていく、といったそれぞれの状況に合わせた工夫が必要になります。

田中:ソートリーダーシップという言葉が出てきましたが、これは、特定の課題やテーマに対して、企業がその解決策となりうる主張、思い、理念などを掲げ、社会や顧客からの共感と評判を生み出すことを指します(※1)

 3つ目の長期でのコミュニケーションに関しては、その効果測定に関しても長期的に見ていくことが必要になるとお見受けします。ですがマーケティング視点ではクオーター単位で見たり、比較的短いスパンで数字を回したりすることが多いと思います。こうしたギャップについては、どのように対処していますか。

藤原:中小企業に向き合うミッドマーケットチームと大企業に向き合うエンタープライズセールスチームに組織を分けて、それぞれ異なる動き方ができるようにしています。また、PR側の効果測定は永遠の課題ではあるのですが、媒体掲載数やプレスリリースのPV、SNSフォロワー数だけでなく、PR施策がしっかりマーケティングに連携しているかどうかを最も重視しています。たとえばイベントにご参加いただいたお客様のリストが、どんな内容のイベントだったのかということも含めてマーケティングチームに共有され、お客様の関心に応じたお知らせをメールマガジンなどの形でご案内しながら、中長期的に関係を深められるようにしています。

 なお当社ではマーケティングチームの中にリードマーケティングチームと広報チームが含まれる体制になっています。広報チームがコーポレート寄りで、IRチームと一緒になっている企業も多い中、特徴的ではないかと思います。

※1 参照元:朝日新聞社メディアビジネス局 広告朝日「ソートリーダーシップ

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この記事の著者

田中 幸司(タナカ コウジ)

ビルコムへ入社後、BtoB企業へのPRコンサルティング、戦略策定、コンテンツ企画に携わる。その後、BtoB SaaS「PR Analyzer」事業の法人営業、マーケティング、オペレーション統括を経て、現在は代理店事業のマーケティング、インサイドセールスを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/27 16:51 https://markezine.jp/article/detail/37582

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