桁違いのコンテンツ予算がテレビ広告の価値を上げる
今やテレビ広告と動画広告の区分の定義が難しくなっている。筆者の米国での定義では、テレビ広告は「コンテンツ予算を年間で兆円規模に持つテレビ局や映画会社が主導で制作した、プレミアム番組コンテンツに挿入するCM」である。これに照らし合わせると、ソーシャルやYouTube上でのインフィード動画広告やバナー広告は、“動画”と言えども、オンライン配信のテレビ広告とは別物と区別できる。
米国の大手テレビ局などは年間1兆円以上の予算を持ち、Netflixに至っては2兆円規模に迫りつつある。そしてこの巨大な予算には、オリンピックやフットボールなどのスポーツ番組の放映権料が含まれていない。AmazonがNFLのオンライン配信15試合分を1,100億円で契約したというニュースは日本でも話題にあがるところだろう。さらに近年ではオンラインゲームやeSportsの放映権料が伸びており、Netflixがこの分野に参入した報道も記憶に新しい。“しっかりとした予算とプロセス”で制作されている番組コンテンツである――広告主にとっては、これこそが“信頼”に値するものである。オンライン配信コンテンツ市場の成長拡大により、オンライン配信のテレビ広告枠の価値が高まっているのだ。
ここであえてテレビ広告と動画広告の区分に言及したのは、ソーシャル上の動画広告が拡大浸透するあまり、「コネクテッドTVやアドレサブルTV広告も動画広告の延長」と安易に塗り替えられないように意識したかったからだ。YouTube広告とはまったく別の市場が広がりつつあることを押さえておきたい。
※1「US Linear Addressable TV Ad Spending,2019-2023」「US Connected TV Advertising 2020」
※1ドル=110円換算
