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トライブレポート:最先端の消費インサイトを知る

「耳」からの情報収集に求められる真の価値 音声メディア拡大の裏にあるインサイト

 本連載では、先進的な生活を送る人たちを、未来の兆しを教えてくれる存在である「トライブ」と捉え、彼らの価値観や考え方から未来の生活者のあり方を洞察します。第二回となる今回は、情報収集をテキストや動画よりも“音声”を主体として行う「コンフォートリスナー」に着目。情報洪水とも言われる現代に、彼らが実践する“耳からの情報収集”の実態を紹介します。

“音声”を中心に情報収集を行う、コンフォートリスナー

 今回ご紹介するトライブは、テキストや動画ではなく、“音声”を中心に情報収集を行う「コンフォートリスナー」です。情報洪水と呼ばれるような時代の中で「情報の内容」だけでなく「情報の取り入れ方」にまで気を配る人が増えているという点に着目したのが、私たちがこの調査を行った背景になります。そこで今回は、音声メディアが持つ情報収集上の特徴と、象徴的な使われ方を紹介しながら、これからの情報収集のあり方・時間の捉え方について考察していきます。

トライブについての詳しい説明は、連載第一回をご参照ください。
第一回:欲しいのは家政婦ではなく家の総務部? 家事代行を活用する人たちが本当に“アウトソース”したいこと

 音声メディアには、音楽や音声SNS、オーディオブック、配信サービスなど様々な形態があり、様々な使われ方があります。本記事では、情報収集という観点においてユニークな示唆を提供できる事例を紹介します。

 たとえば、本の自動読み上げサービスにより、今まで視覚によって得ていた情報を耳から得られるようになりました。視覚が自由になるため、散歩をしながら、運転をしながら、お風呂にはいりながら、といった「ながら行動」が格段にしやすくなり、マルチタスキングという考え方が一般的になっていきました。

 このように、コンテンツ形式の変化は、生活者の「行動」の変化や「メディアへの向き合い方」の変化と密接に関わっています。それでは、コンフォートリスナーの調査より、私たちが今後の生活者の価値観・行動変化に示唆があると考えるものをいくつかピックアップして紹介いたします。

求めているのは“作り込まれていない”本音トーク

 「美容関連の話も、ルーティンなんかは聞くだけでも十分伝わります。動画クリエイターの方はしっかり作らなきゃと思っていらっしゃる反面、音声はそういうのがない気軽な本音トークなどが聞けます」(会社員・20代女性)

 週4日テレワークを行う会社員のAさん(24歳) は、1、2年ほど前からテレビよりも音声コンテンツを視聴するようになったと話します。決まったドラマ以外の番組は、部屋を片付けながら聞けるようなラジオや配信が今の生活スタイルに合っていると感じているそうです。

 動画はある程度見続ける必要があるため、疲れてしまう・他の事ができない一方で、音声コンテンツは耳を傾けるだけで済む点が非常に楽だと言います。家の中で大半の時間を過ごし、コンテンツに触れる時間が増えたという変化の中で、生活との両立をしやすいことが音声コンテンツの魅力であるということが伺えます。

 また、聞いているコンテンツの内容に関しても興味深い発見がありました。動画は編集などの工程があることから、洗練された凝った内容であることが多く、気軽に見ることができないというのです。対して音声コンテンツは、ささいな情報や本音トークを聞くことができるため、友達と雑談をしているような面白さがあるといいます。

 Aさんはテレワークをするようになってから、以前ほど「笑っていない」ことに気づき、一日の満足度を高めるためのサプリメントのような意味合いで音声コンテンツを聞くようになったと教えてくれました。これは、一人で過ごす時間が増えた中で、ストレス解消とまではいかないが、たわいもない話題でリフレッシュする感覚が求められるようになってきているということを象徴した事例であると言えます。

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この記事の著者

梅澤 健二郎(ウメザワ ケンジロウ)

株式会社博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザイナー

生活者の定性的なリサーチをもとに幅広い業界のクライアントに対して生活者起点での未来の兆しを洞察。生活者インサイトデータベースを活用した新規事業開発などのコンサルティングサービスの提供に従事している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/37611

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