ブランド価値を広告配信戦略、クリエイティブに落とし込む
MZ:「Teads L’Atelier(ラトリエ)」(以下、L’Atelier)というのはどのようなプログラムですか?
川口:L’Atelierはブランドが伝えたいメッセージに合わせ、適したクリエイティブを広告戦略から一緒に考えていくワークショップです。
今回は、小堺様の話にあった受容性という軸に、どういうコンタクトポイントでどのようなクリエイティブであれば、ブランドのメッセージ、ユニーク・セリング・プロポジション(USP)が届くのかを、多様な視点で考えていきました。
川口:具体的には「どのような表現をすれば、キャットオーナーが指を止めて自分の意思に基づき能動的に広告を見るか」という点からアイデアを出し、広告効果を上げる表現を考えました。
そしてCookieターゲティング、またはCookielessターゲティングで顕在ニーズを持つキャットオーナーに広告を配信し、愛らしい猫の素材を使って情緒的な部分でアプローチするクリエイティブを作れば、広告効果や態度変容の効率が上がるのではないかという仮説を出し、10本以上のバリエーションを作りました。最終的に採択されたのは4つです。
1つは「ミックスフィーディング」や「猫の健康を守るのに、1日にコップ一杯程度の水分が必要」といったファンクション面を中心に訴求する広告です。これをディスプレイと動画で2種類作りました。ディスプレイでもグラフィックでちょっとした動きを付け、キャットオーナーのアイキャッチとなり、指を止めたうえで、機能訴求のコピーを視認してもらうことを目的としています。
もう1つは、かわいい猫の動きを見せ、エモーショナルに訴求する広告です。これもディスプレイと動画で2種類作りました。この広告では、「あ、かわいい」をフックに広告に意識を向けてもらいます。視聴を完了すると、最後に最も届けたいメッセージである「愛猫を守る水分摂取にミックスフィーディング」というコピーが出てきます。視聴完了者のLP送客を含めて、サードファネルに向けた詳細情報の訴求へと施策は移行していくことになります。
Cookieターゲティングからの脱却も視野に
MZ:先ほど、CookieターゲティングとCookielessターゲティングの両方で配信するというお話を伺いましたが、今回のプロモーションに関するコミュニケーション戦略全体についても教えてください。
川口:2023年からChromeのサードパーティーCookieが廃止されるため、以前よりネスレ様からCookieless対策についてご相談を受けていました。Teadsプラットフォームでは、コンテンツメディアの記事面に広告を配信しているのですが、500以上のセグメントを4つの階層で分類した記事内容をAIが解析し、広告に適した記事に配信を行う「Advanced Contextual Targeting(アドバンスド・コンテクスチュアル・ターゲティング)」というソリューションがあります。
今回の「ピュリナ ワン」のプロモーションでは、キャットオーナーやペット、飼育、ペットの健康を守るという文脈を広く取る形でコンテクスチュアル・ターゲティングを含めて展開しました。
山田:今回のコンテクスチュアル・ターゲティングは、Cookieに頼ってターゲットを特定して配信する手法が時流に合わなくなるなか、「消費者のモーメントを捉え、その瞬間に記事を見ている人をターゲティングする」という点が、ネスレ様が重視している広告配信のコンセプトと合うと考えて提案し、ご了承いただきました。
また、ネスレ様はブランドセーフティについても積極的に取り組まれていますが、「安全な配信面」というところを最大限突き詰めていくと、配信先が縮小傾向になるという課題もあります。そこでコミュニケーションの新たな機会として、ページの文脈(=コンテキスト)に沿った「適切な配信面」を確実に捉え、ユーザーのモーメント(=ライトタイミング)にマッチした広告を配信することで、意図する消費者の方と良好な関係が構築できるという仮説を持ち、コンテクスチュアル・ターゲティングを選んだという経緯があります。
小堺:そうですね。まさしくネスレの基本方針と合致するアプローチだと感じました。