コロナ禍2年目で消費者が節約傾向に
MarkeZine編集部(以下、MZ):2020年以降、生活者の行動は大きく変容しました。この1年を振り返って、自社ECサイトの役割や顧客の購買行動にどのような変化が見られましたか。
サザビーリーグ相川氏(以下、相川):当社では時短営業の影響もあり、夕方以降の店頭売上が顕著に下がってしまいました。また、お客様の衛生意識が高まったことで、他のお客様が試着したり手に触れたりした商品を避け、新品を購入したいというニーズも増えています。
相川:こうした背景から、ECサイトは店舗がカバーできない時間帯やニーズを満たす役割を果たしています。とはいえ全社売上に対するECサイトの売上シェアはまだまだ高くないので、店頭もECサイトも継続的に力を入れていかなければなりません。
私が担当しているジュエリーブランド「ARTIDA OUD(アルティーダ ウード)」に起こった変化として、外出機会の減少にともないジュエリーの「ハレの日需要」が減りました。一方で、オンライン会議の増加により首回りや顔回りを華やかに見せたいという日常使いの「ご褒美需要」は高まっています。
ピーチ・ジョン宮澤氏(以下、宮澤):当社は1回目の緊急事態宣言下に実店舗を軒並み閉店させたため、ECサイトで購入するユーザーが急増しました。2020年は「時間に余裕ができたから自宅からECサイトを通じて買い物を楽しむ」という方が多かったのですが、最近は長引くコロナ禍に不安を覚える方が多いのか、慎重に吟味して買う方が増えましたね。ECサイトをより工夫しなければCVRは上がらないと感じています。
相川:消費者の節約意識が高まるにつれ「そのブランドで買う意義」を求める傾向も強くなっていますよね。ブランドの打ち出すビジョンが、これまで以上に重視されている気はします。
偶発消費を促し「楽しい買い物体験」を提供したい
コメ兵甲斐氏(以下、甲斐):高価格帯の商品を扱う当社の場合は「実物を見てから購入したい」というニーズが高く、売上のほとんどを店舗が支えていたため、コロナ禍では苦戦を強いられました。なんとかECで売っていこうとオンラインの施策を強化したことで、コロナ禍前よりもECサイト経由の売上を増やすことができました。店舗の営業を再開してからは足を運んでくださる方の数も回復してきています。
甲斐:あとは、接客用のスマートフォンを持たせたことで店舗スタッフのオンラインに対する関心が一気に高まったのも、コロナ禍に起こった変化の1つですね。たとえば、お客様と電話でやりとりをしていたスタッフがLINEやZoomを使った接客を積極的に行うなど、今までとは違うアプローチをしてくれるようになりました。
MZ:awoo Japanは2020年8月に日本市場へ本格参入されました。支援企業のお立場から、変わりゆくEC市場にどのような価値を提供してこられたのでしょうか。
awoo Japan吉澤氏(以下、吉澤):日本進出時はまさに、ECサイトの役割が大きく変わっている最中。事業者の皆様がECサイトの役割を再定義される中、支援企業として「楽しい買い物体験を提供できないか?」と考えるようになりました。
吉澤:実店舗ではウィンドウショッピングのように、目的もなくフラッと訪れた先で素敵な商品と出会う体験が得られますが、ECサイトを回遊しているユーザーにも同様の体験を提供したいと思ったんです。
そこで「セレンディピティ(商品・ブランドとの偶発的な出会い)」や「偶発消費の実現」というビジョンを掲げて1年間活動を続けた結果、現在では皆様のようなイノベーター企業に製品を導入いただくことができました。
ニーズ把握、回遊性向上、SEO対策の全てをタグで実現
MZ:相川さん、宮澤さん、甲斐さんにお聞きします。なぜ自社のECサイトにAIマーケティングソリューション「awoo AI(旧・nununi)」を導入しようと思われたのでしょうか。
相川:当時、マーケティングのキーワードとして「セレンディピティ」が注目を集め始めていたんです。「ECサイトで偶発的な消費を呼び起こすツールがあったらいいな」と思っていたところ、awoo AIに出会いました。
相川:導入して良かった点は、自動生成されるタグによってユーザーに商品提案ができること。タグはよく検索されるワードから生成されるため、「こんな商品が欲しい」というユーザーの思いを自ずと可視化してくれます。さらにSEO対策もでき、新規顧客の獲得にもつなげられる。導入した結果「awoo page(awoo AIが自動生成するLP)」経由の回遊率は通常の3.6倍、CVRは3倍と高い結果になりました。
宮澤:回遊性の向上とSEO対策のために導入しました。1回目の緊急事態宣言発令時にECサイトの売上が上がった際、PVが大幅に増えたんです。1訪問あたりのPVが多ければ多いほど、売上は上がりますよね。
当時の売上を維持するためには、回遊性の向上が最重要課題でした。そこで相互リンクを貼るなど様々な施策を行ったものの、うまく機能せず手詰まりになってしまったんです。
また、自然検索が下がっていたことも課題でした。話題作りのために著名人をキャスティングするとなればコストがかかりすぎる上、話題が長続きしません。どうすれば継続的に話題を作れるのか悩んでいました。
awoo AIはユーザー起点の言葉でハッシュタグが自動生成され、タグ別のインデックスページも自動的に作られます。ハッシュタグが好きな日本のユーザーにハマると思いました。同様のことを社内で実施しようとすると、関連部署に依頼をして実装までに数ヵ月はかかってしまいます。タグの生成・分類が全て自動で完結することに大きな衝撃を覚えましたね。
ユーザー目線のカテゴライズも可能に
宮澤:それに、思ってもみなかったようなタグが突然生まれるんですよ。たとえば「総レース ブラジャー」などです。企業側はどうしても「谷間を見せる」といった企業目線のカテゴライズをしてしまいますが、タグのおかげで「こんなニーズがあったんだ」という新たな発見につながりました。
導入後は回遊性もCVRも4倍に伸長し、ECサイトの課題を解決してくれる画期的なサービスだと実感しています。
甲斐:コメ兵のECサイトには毎日500点以上の新着商品がアップされ、常時7万点以上のアイテムが掲載されています。ただ、1点1点の状態や条件が異なる中古品は商品に共通する情報がブランド名や型番くらいしかないため、サブカテゴリをうまく作れずにいたんです。手動でカテゴリ分けするにも限界があり、お客様が本当に欲しい情報にたどり着けていないのではないかという危機感を持っていました。
awoo AIでは細かな特徴別のタグで商品情報を分類できるので、当社のECサイトにぴったりです。導入後は回遊性が4倍になり、CVRも順調に伸びています。
リブランディングで商品理解とデータ活用の機能を強化
MZ:吉澤さんにお聞きします。御社は2021年10月18日にnununiをawoo AIへと刷新されました。リブランディングの目的や変更点をお聞かせください。
吉澤:日本のマーケットに「偶発的消費のデジタル化」「ECでセレンディピティを実現する」というビジョンが浸透したタイミングでリブランディングに踏み切りました。今後の多角的な事業展開や開発強化、機能拡充を見据え、次のフェーズに向かおうという意思表示でもあります。
吉澤:awoo AIは「awoo PDP」と「awoo AMP」という2つのアーキテクチャで構成されています。awoo PDPは、商品情報を自動的に理解する当社のコアなAI技術です。「商品のあらゆるデータを集める箱」と言い換えることもできます。
一方のawoo AMPは、あらゆるチャネルに商品データを活用するためのマーケティングソリューションです。ECサイトに弊社が生成するハッシュタグを連携させることで、消費者と商品のマッチング精度を高めます。
AI精度のさらなる向上と外部チャネルとの連携強化へ
MZ:宮澤さん、相川さん、甲斐さんにお聞きします。今後awoo AIで取り組みたいことについてお聞かせください。
宮澤:awoo AIで生成されたタグとお客様が反応したタグを照合して、商品開発や商品カテゴリの最適化に活かしていきたいですね。あとはメンテナンスフリーで更新されるタグのインデックスページがとても使いやすいので、PR担当者に横展開してSNSでの発信に役立ててもらいたいです。このように、活用しきれていない部分はまだまだたくさんあります。
相川:当社はメールマガジンにawoo AIのタグを埋め込んでパーソナライズメールを送ったり、LINE施策に活用したりするなど、外部チャネルとの連携を強化したいです。オンラインチャットサービスとの連携も考えていて、お客様からチャットでお問い合わせがあった際にawoo AIのハッシュタグを参照しながら商品をレコメンドすることもできると思います。
甲斐:今はまだサイトの全ページにawoo AIを実装できているわけではありませんが、回遊性が高まっているのは明らかなので、もっと多くのページにawoo AIを取り入れたいですね。自動生成されるタグの精度はさらに向上していくと思うので、「このタグをこう変えたら良くなった」というデータを活用してサイト改善を続けていきたいです。
MZ:皆様の展望を踏まえ、吉澤さんはこれからどんなことに力を入れていきたいですか?
吉澤:プロダクトをブラッシュアップしながら、外部連携の強化にも力を入れていきたいと考えています。
また利用いただける業界も増やして、さらにマーケットを広げていきたいですね。今後はコスメ業界などにも広がっていきますし、スーパーマーケットやドラッグストアなどリテール業界の企業とも新しいOMOソリューションを作っていきたいです。
外部連携の強化とマーケットの拡大に欠かせないのが高精度のAI技術。今後はより一層技術力を向上していくつもりです。
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