ルールが変わるなかで、事業者はどう動いているか
有園:本連載では、これまで何度か「改正個人情報保護法」と3rd Party Cookieの利用制限に関して取材をしてきました。今回は、DMPやCDP、またCMP(コンセント・マネジメント・プラットフォーム:データ利用の同意を管理するソリューション)などのツールを手掛けるインティメート・マージャーの簗島さんを訪ねました。経営者かつデータサイエンティストでもある簗島さんは、データ活用やその利用規制に関して、MarkeZineにたびたび寄稿もされています。
改正個人情報保護法や一連のCookie規制は、いわばルールが変わるということですよね。まず、これらをどう捉えているか、うかがえますか?
簗島:おっしゃるように、ルールが変わる、ゲームチェンジの時だと思います。3rd Party Cookieが使えなくなると、僕らのようなデータプラットフォームカンパニーも、DSPやSSP系の事業者も、既存のビジネスは続けられません。だからこそ、1年以上前からわかっていたポストクッキー時代への適応をチャンスと捉えて、3rd Party Cookieに依存しない形でデジタルマーケティングを推進する方法を開発してきました。
有園:3rd Party Cookieに依存しないデジタルマーケティングには、具体的にどのような方法があるのですか?
簗島:大きく2つあります。ひとつは同意を取得している情報をもとにしたIDの生成で、当社では既にDSPやSSPと連携して活用を始めています。固有のID生成方法というより、条件や状況に応じてIDの発行方法をたくさん用意しているような形ですね。同意のレベルはデバイスやユーザーによって異なるので、その人のブラウザで使えるいちばん精度の高いIDを生成し、ターゲティングしています。
3rd Party Cookieに依存しない2つのターゲティング方法
有園:もうひとつは?
簗島:個人へのアプローチを意図したIDの考え方とは違い、属性情報だけを使って広告を入札・応札する、リアルタイムデータ連携の仕組みです。Googleの3rd partyデータの代替技術「FLoC」にも近いです。
改正個人情報保護法のような法律の問題もありますが、そもそも消費者からすると「自分が特定されているのが気持ち悪い」という感覚もありますよね。こちらの方法で扱うのは、あくまで統計情報なので、そうした課題は発生しません。たとえば、あるニュースサイトから「男性」というフラグをSSPを通じてDSPに渡し、DSPはそれに対して広告を入札する、といった流れです。男性という「群」でデータを捉えている。コホート(同じ属性を持つユーザーグループ)とも言えると思います。
有園:「群」に対して広告を打つ、オーディエンスターゲティングのような形ですね。
簗島:そうですね。メディア側でわかる属性のほかに、閲覧状況から「おそらく男性」とか「旅行好きと思われる人」に打つといったこともできます。これはコンテンツターゲティングにも似ていますね。1点だけ違うのは、インプレッションしたときの情報のみではなく、僕らはこれまでの履歴を1st partyデータ内で使っていることです。
この仕組みは、メディア側にタグを入れてもらう必要があるんですが、日本はバイサイドとセルサイドがかなり分断されているので、広告主からするとメディアの仕組みや動きがあまり知られていません。先ほどのID生成も含めて、アドテクの会社にもなかなか理解されにくいですね。