どれだけの視聴者がどれだけテレビ画面に注目しているのか?
ここまで、ブランド広告の露出量やどれだけの視聴者が番組に接触したかを計測した接触率を用いてスポンサー効果を検討してきた。ただ、どれだけの視聴者がテレビ画面を“注視していたかという情報”は含まれていなかった。
本研究で用いた接触率は番組が放映されているときに、テレビをつけていたテレビの台数を基に計算された数値であるため、実際に画面を注視していたかまではわからない。そのため、テレビ画面をちゃんと注視していたかどうかの指標として、アテンションデータ(※2)の指標の一つであるアテンション含有率(※3)を加えることで、さらに正確なスポンサー効果を探っていくことにした。
図表3では3つのスポーツ中継番組を対象として、ブランド広告の露出量と、番組接触率、アテンション含有率も加味した数値で比較したものである(詳細は図表3の注釈にて解説)。

まずブランド露出量のみを比較すると、番組ごとのブランド露出量の大小が見てとれる。競技1は他の番組よりもブランドが多く露出しており、時間当たりのブランド露出効率も高いことがわかる。一方、競技2と競技3はブランド露出量ではそれほど大きな差はないものの、ブランド露出量×番組接触率×アテンション含有率で比べてみると大きな差があり、競技3は3番組中最も低い。
これは番組内でブランド露出は十分に行われていたものの、番組接触率やアテンション含有率が低いがゆえに、他番組よりも数値が低くなっていることを示している。そのため、3つの番組の中で競技3はブランド露出の効果は低いということになり、効率的なスポンサー効果を発揮できていないことが考えられる。
また、逆の視点で見てみると、競技2はブランド露出量のみで比較をしたときより、相対的に掛け算された数値が上昇しているのがわかる。これはブランド露出量の割に多くの視聴者が番組を視聴しており、さらにテレビ画面への注視率も高くなっていたため、3つの番組内では最も効果的にブランド広告の露出がなされていたと言える。
絶対的な数値としては、競技1のスポンサー効果が最も高いものの、ブランド露出量との比較をすると、競技2のような相対的にブランド広告の露出がうまくできていたケースを見てとれるのは興味深い発見ではないだろうか。さらにスポンサー費用とのバランスを見れば、費用対効果まで評価できる。
また、これら数値が上下するシーンについても述べていくと、アテンション含有率が高くなるシーン例としては、目玉の選手が登場するシーンでは数値が上昇しやすい傾向にあった。過去の放送履歴を知ることで、どのシーンに広告を露出させると効果的かを把握できるため、時系列で各指標を計測していく意義は大きいと考えられる。
本研究ではスポーツ中継番組に対するブランド露出効果の測定を動画解析技術や旧来の情報アセットと組み合わせることで、真のスポンサー効果を知るアプローチを進めた。ブランド露出を測定する手法は複数あるものの、単独でデータを俯瞰するだけでは見えてこない結果を確認することができたため、各指標を組み合わせる重要性は高いと言えるのではないだろうか。今後は分析事例を増やす以外にも、テレビ画面内にブランドが露出する場所によって、視聴者のブランド認知などの態度変容は変化するのかも検証を進めていきたい。
※1 Media Gauge®TV
複数のテレビメーカーから収集した、ネットに結線されたスマートテレビと録画機の視聴計測サービス。都道府県別はもちろん、一部エリアでは市区町村別でもテレビデータを分析することが可能で、各放送局別(地上波・BS・CS)、各地域別(都道府県など)に、15秒単位でテレビ番組やテレビCMの視聴行動を把握することができる。※2 アテンションデータ
TVISION INSIGHTSが保持している最先端の人体認識技術を搭載したセンサーを用いて、テレビの前にいる複数の視聴者の視聴態度を毎秒ごとに測定したデータ。同社が提供するTelescopeでは、簡単にそのデータを確認することができる。※3 アテンション含有率世帯視聴率1%当たり「どのくらい“ちゃんと見ている(=注視している)人”がいるのか」がわかる独自指標。