期待感向上と持続のヒントはK-POP
MZ:アルバムのリリース前から当日、発売後と様々な施策を実施されています。何を意識しましたか?
大津:10日前から当日までは期待感アップと拡散を狙って、毎日アルバム収録曲の歌詞付き動画を各種プラットフォームに投稿しました。全体を通して動画制作は全員が担当し、スケジュールもタイトでしたが、土谷さんが事前にあれくんのブランディングに沿ったかたちで、使用する書体や色味をまとめてくれていたので、テイストのバラつきもなく、非常にスピーディーに実施できました。

土谷:期待感を出すために、カウントダウン用のティザー動画も用意しました。これはK-POPを参考にしています。いちファンの意見でもありますが、K-POPはファンをワクワクさせるのが上手です。しかも、今回、マーケターの視点で思いついた施策はほとんどK-POPで事例がありました。
赤間:たとえばK-POPではひとつのMVを出す際に、ティザー動画やビハインド動画(撮影の裏側や番外編を扱ったもの)、画像やニュースなどを発信して複合的に話題を持続しています。それぞれの話題化がマーケティング的にどういった味合いがあるのか整理して、施策の参考にしました。
今回、リード曲の先行配信やMV配信など、アルバムリリースまでのアーティストのスケジュールは既に決まっていたので、それに合わせてデジタル施策を打つ際にそれぞれの意味付けをしたいと考えました。発売前に限らず、様々なフェーズでの解釈にK-POPが参考になりました。
たとえば、SNSで新規リスナーにまで届けるには、まずコアな人にファーストリアクションをしてもらう必要があると考えています。そのためのプラットフォームはどれか、投稿に適した時間帯や曜日、ハッシュタグはどのようなものか?などを考える際のヒントにしています。
「私の好きな曲を歌っている人」にアプローチ
稲:発売前に基本的に期待感の種まきをしましたが、他業種のマーケティングとの違いを感じました。一般的なマーケティングではニーズを把握して、商品を作ってから、アプローチして効果検証をします。ですが、音楽の場合は楽曲が既に制作されているので、アプローチと効果検証しかありません。ですので、発売前はリスナーのニーズや接点を探りながらのプッシュを続けました。たとえば、新曲の縦型動画を制作して各プラットフォームに投稿することで新規リスナーに届くようにしています。
赤間:また、あれくんは『好きにさせた癖に』というオリジナル曲でバズを生んだことがあります。現在もその曲名や歌詞の検索でYouTubeに流入している層がいるので、動画のハッシュタグには「好きにさせた癖」や、歌詞「好きになってしまったんだよ」を使用しました。「私が好きな『好きにさせた癖に』を歌っている、あれくんというアーティストが新曲を出すんだ」と曲からアーティストにつなげていくことを狙いました。
MZ:アルバム発売の前日には「あれくん祭り」というイベントもTwitterで開催されていますね。また、発売後はいかがですか?
土谷:ハッシュタグ「#あれくん祭り」を付けて、曲の感想や視聴報告をしてもらうというものです。いろいろな人を巻き込んでアルバムリリースを盛り上るために企画しました。ネーミングも普段はクールなあれくんの雰囲気と、日本の祭りというフレーズのちぐはぐさがファンの心をくすぐるのではないかと考えました。また、コロナ禍でお祭りといったハレのものに飢えているので、そういった意味でもアルバム発売とともに高揚感が出るのではないかと思います。
赤間:発売当日以降はファンとのエンゲージメント向上のために、「#あれくん祭り」に参加いただいたコアなファンにアルバムのビハインド動画をYouTube限定で公開しました。また、発売以降は曲を聴いてファンになってもらうために、Spotifyにプレイリストを用意して各プラットフォームから誘導しました。