課題はプラットフォームの癖を掴むこと
MZ:実施について、狙い通りにいったところと、改善の余地があるところを教えてください。
稲:新規リスナーにリーチするためにリール動画を使ってアプローチしたところ、Instagramアカウントのフォロワー外からのリーチがフォロワーからのリーチに比べて2倍以上高い結果になりました。とても良い効果が出たと思います。一方でYouTubeでABテストなどをしたものの仮説通りにいかないところも多く、プラットフォームの癖や、そこにいるユーザーの特性をもっと把握する必要があると感じました。
赤間:稲さんがおっしゃるように、プラットフォームの特性を理解して、アルゴリズムに働きかけるための方法を掴んでいく必要があると感じます。たとえば、新規へのリーチを狙ったYouTubeショート動画はチャンネル登録者へリーチしていました。いろいろ試しものの、まだ勝ちパターンが見つかっていません。
ファンはアーティストの舞台裏も見たい
大津:KGIとして掲げた「あれくんのことを好きなファンを増やす」といった意味では、ビハインド動画の反応がとても良かったです。アーティスト側の気持ちに立つと、あまり裏の部分を見せたくないという人もいると思いますが、完成された作品以外のものでも、コンテンツとして出してゆくことでファンのエンゲージメントも高まりますし、また、アーティストもマーケターも、あたたかなコメントや好意的なリアクションをもらうことで、モチベーションも上がりますよね。
課題点としては、控えめな性格のファンの人たちにはちょっと難しいのかもしれませんが、音楽を聴くだけにとどまらず、さらに、その楽曲やアーティストについて「拡散することで、アーティストを応援することに貢献でき、ファンの喜びにもつながる」という認識を持っていただくための働きかけをもっとしていけると良かったと感じます。

土谷:ビハインド動画に関するTwitterやYouTubeのコメントが本当に好意的でした。アーティストの裏側を知ることで、ファンのエンゲージメントが上がるように感じます。
ただ、Spotifyへの対策については課題も残りました。これに関しては、アプローチするプラットフォームも関係があったかもしれないと思います。実践期間中にLINE MUSICのCOO高橋明彦さんの講義を受けて感じたのは、リスナーの年齢層を考えるとLINE MUSICでの施策とも相性が良かったかもしれないこと。時間があれば、試してみたいと感じます。
「アーティスト評価」への関与が大きな成果
MZ:脇田さんは今回の結果をどのようにお考えですか?
脇田:私はチームのみなさんが話した結果とは別に、見えない結果があったと思っています。それが、アーティスト評価です。「ネットから出てきた、若い子に人気のアーティスト」から、「ユニバーサルミュージックからデビューした本格派新人アーティストのあれくん」というブランドイメージの立ち上げをデジタルの面からしっかり支えてもらえたと感じています。目先の数字ではない、今後生きてくる土台がしっかり示せたというところは大きいと思います。各所の反応でもその点を強く感じますね。
また、アーティストは人生をかけて勝負しています。アーティスト自身の発信に負担が偏りがちなデジタルの分野で、一緒に戦ってくれるメンバーがいることは非常に心強かったと思います。