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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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来たれ!デジタルマーケター、音楽業界の現状と課題

“曲が好き”から“このアーティストが好き”に変える、チーム「あれくん」のマーケティング施策とは?

チームを組む重要性/いかに生活で意識させるか

MZ:最後に、今回の取り組みを通して得た学びや、音楽ビジネスにおけるマーケターの価値。また、ご自身の業界知識で音楽ビジネスに生かせると感じることを伺えますか?

大津:この講座に参加し、音楽デジタルマーケティングの可能性を肌で感じることができました。SNSでの発信をはじめ、今あるツールを最大限に生かすことは、すべてのアーティストにとって大きなチャンスにつながってゆくと思います。ただ、実際に動いてみてわかったことは、マーケティングはアーティスト一人で行うには限界があるということです。ですから、アーティストが疲弊することなく、できるだけ創作活動にリソースを使うためにも、音楽デジタルマーケターの存在は必要不可欠だと考えています。

 今後、マーケターとアーティストがタッグを組んで活動することが普通になっていけばいいなと思いますし、私も今回学んだ多くのことを自身の活動に生かすだけでなく、マーケターとアーティストの橋渡しができればと考えています。

土谷:先程も触れたのですが、配信系のコンテンツは本当にK-POPから学ぶところが多かったです。音楽とは直接関係ないコンテンツであっても、ファンを巻き込んで、最終的に巨大なファンダムを形成しているのだと思います。日本でも、アーティストのリスナー層に適したプラットフォームを探しコンテンツを地道に配信し続けることが、ファンを増やすことにつながるのだと身をもってわかりました。

 また、毎年実施するイベントがあると良いのかなとも思います。学校では年間行事が決まっていて、そろそろ文化祭や体育祭の時期だなと教職員も学生も意識しながら生活しています。音楽ビジネスではライブや楽曲公開とイベントが紐付いていることが多いですが、「毎年この時期にやる」というイベントがあると、ファンのみなさんの音楽とは関係ない生活の中でも折に触れてアーティストの存在を意識してもらえるのではないでしょうか。

音楽ビジネスにマーケターが介在する価値とは

赤間:音楽やご自身の見せ方など、アーティストが大切にしていることを、何よりも大切にした上で、マーケターがプロモーション全体の提案にも携われれば、“作り出す”部分へマーケターが貢献する余地はあると思います。

 アーティストはブランドと言い換えられるかもしれません。マーケティングの各施策が、アーティストというブランドを外さないように設計されていることが大切です。そのためには、マーケターが実務で行っているブランドのコンセプト設計や、インナーブランディングの取り組みは、アーティストのマーケティングをサポートする際に生かせるのではないでしょうか。

 また、音楽というアート性の高いものを取り扱っていることもあり、“イケてる”ことが判断基準になることが、消費財のマーケティングより多いと感じました。もちろんそれも大切ですが、マーケティング文脈ではコミュニケーションの目的を外さない視点が必要だと思います。マーケターの実務では施策のツール作成にあたり、マーケティング目的を達成するクリエイティブとなるように、クリエイティブブリーフのようなもので企画意図を関係者に伝達すると思うのですが、そういったスキームも、デジタル広告やSNSで投下する画像や動画作成にあたって有用ではないかなと思っています。

稲:アートをマーケティングすることの難しさを感じました。マーケティングチームとアーティストチームがコミュニケーションして認識をすり合わせることが非常に大事ですね。

 マーケターの介在する意味は2つあると思います。1つはデータを読み取る力です。想像していた以上にツールが揃っていましたが、完全に痒いところに手が届くレベルには至っていないというのが正直な感想です。デジタルは小さなPDCAを回して仮説検証を繰り返すことが大切だと思います。データを読み取って、打ち手を考えるマーケターの存在は意味があると思います。

 もう1つは、マーケティングの考え方です。たとえば、商品をスイッチさせたいなら競合分析しますよね。そういったマーケターとしては当然の考え方がとても有用だと思います。一方で音楽と消費財の違いも感じます。消費財の場合、スイッチングするなら競合から完全に切替える必要がありますが、音楽は併用ができます。ですから、分析後にアウトプットする施策の内容は変わってきます。私自身、そのアウトプットに関して新しい知見が得られました。

他業種を含めた、音楽ビジネスの活性化を目指す

MZ:脇田さんは今回の取り組みをどう評価されますか?また、今後はどのような展開をお考えですか?

脇田:非常に得るものが多く、手応えを感じています。私自身これまでもずっと、音楽ビジネスへのデジタルマーケティングの取り込みが必要だと言い続けてきました。この10年ほど、日本の音楽業界はCDの多数枚買いやライブといったアナログなものに依存してきました。もちろんマネタイズの面で優れていますが、体験型ではないリスニング型の音楽に関してはダイナミックさが失われていると感じています。

 今回、業界スペシャリストである講師と、受講生と、アーティストが一丸となって「デジタルで音楽どう売るか」に熱意をもって取り組むことで非常に良い空気が生まれました。これを業界全体に広げ、かつ異業種も巻き込んで成立させていきたいと感じています。

 この目標を成し遂げるためにも、第2期の講座を実施し、1期生のみなさんとは音楽マーケティングLabという組織を立ち上げ、実践を続けていきたいと思います。音楽にも様々なジャンルがあり、アーティストごとによっても課題は異なりますから、それらに対応できる人材になってもらいたいですね。

●音楽マーケティングブートキャンプでは第2期生を募集中だ。詳細は本記事ページ下部の関連リンクから確認できる

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/37826

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