2つのプライベートブランドを統合した背景
MZ:ありがとうございます。ここからは三浦さんにも加わっていただき、リニューアルの裏側をさらに詳しくうかがっていきます。
三浦:ファミリーマートには、「ファミコレ」と「お母さん食堂」という2つのブランドがありました。ファミリーマートのプライベートブランドが、どのように店舗への集客に貢献できているか、という視点でみると、どちらのブランドにも改善の余地があると思いました。ファミコレは認知が十分でなく、お母さん食堂は認知はあったものの、ファミリーマートとの結び付きが薄い。それならば両方をリニューアルしてワンブランドにしませんか、と提案をしました。

小川:新しいロゴマークやネーミングは「一目でファミマの商品であることがわかるかどうか」を一番に考えていました。
「ファミマル」という名前もすべてカタカナで表記しています。アルファベットなどを使ってかっこよくすることもできたのですが、老若男女、誰でも親しみを持てるブランドにすることを優先しました。

MZ:そのような意図があったのですね。進めていく過程では、ファミリーマートのマーケティングや商品開発のチームと、様々な議論があったのではないですか?
小川:本当に、いろいろな議論をしましたね。デザイン的に良いと思って提案しても、ファミリーマートにとっては今までの経験から受け入れてもらえないこともありました。
そのため「どうすればお互いが納得できるのか」ということはとても考えていて。作ったデザインを見せて「かっこいいですよね」と言うだけでは絶対に納得してもらえないので、「こうすると文字が見やすくなります」「選びやすくするための工夫です」などと、理由を伝え、模型なども作って持っていき、提案するようにしていました。このように双方が意見を出し合い、納得できるデザインにしていく部分が、初期に特に頑張ったところです。

「社内資料ですが、広告します。」の理由
MZ:小川さんが今お話しされた、デザインの意図を丁寧に説明するということについて、私たち生活者に対しても同じように向き合われていたのでは、という印象を持っています。「社内資料ですが、広告します。」の新聞広告(下画像)もそうですし、ブランドのWebサイトにも、説明がありますね。

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三浦:この広告については、3つの目的で制作しました。
1つは、ブランドとしての説明責任を果たすことです。お母さん食堂やファミコレは、これまで本当にたくさんのお客さまのご支持をいただいてきました。ブランドはファミリーマートのものだけではなく、みんなのものになっています。それを変えるということは、すごいことなんです。「買ってほしい」ということ以上に、「なぜ、どのように変わって、皆さまにとってどんないいことがあるのか」ということをお伝えする責任があると考え、広告にしました。
2つ目は、炎上対策としての丁寧な説明です。企業活動が炎上してしまったケースを見ていると、なぜそのようなことをしたのか、本当はちゃんとした理由があるものも少なくないんです。でもその理由が伝わり切っていないために、一度ネガティブな受け取り方をされてしまうと、途端に批判で埋め尽くされてしまう。だとすると、今回のリニューアルはどういう思考の結果、このような形になったのかを理解していただくことが、炎上を防ぐことにもつながるのではないかと考えました。

最後に伝えたかったことは、ファミリーマートの方々の熱意や真剣さです。今回、小川も私も本当に真剣に向き合いましたが、足立CMO(編集部注:ファミリーマート CMO 兼 マーケティング本部長 足立 光氏)をはじめとするファミリーマートの方々は、商品づくりについてそれ以上に考え抜いていらっしゃる。店頭とテレビCMでおいしさを伝える、としたとき、新聞広告の役割は、この熱意を伝えることだと思いました。
MZ:今挙げていただいた3つの要素は、大規模なリニューアルやリブランディングを行うときに、気をつけなければいけないポイントと言えそうですね。