「使いやすく・選びやすく」から始まったデザイン
MarkeZine編集部(以下、MZ):「ファミマル」のプロジェクトを中心になって手掛けられたとうかがっています。初めに小川さんのことを教えていただけますか。
小川:多摩美術大学でグラフィックデザインを専攻し、新卒で博報堂に入社しました。5年ほど働き、その後はスタートアップ企業に転職しています。そのときから考えているのは、デザインという能力を使って経営に携わったり、社会を良くしていきたいということです。退職してフリーランスになったタイミングで三浦さんから声をかけていただき、いくつかキャンペーンや広告の仕事をさせていただいた後、社員としてGOに入社しました。
MZ:ありがとうございます。「ファミリーマートコレクション(以下、ファミコレ)」「お母さん食堂」から「ファミマル」へのリニューアルについては、SNS上にマーケターの考察も多くみられましたね。店頭に並んでいるパッケージがどのようにしてできあがったのか、気になっている読者も多いと思います。
小川:私は広告制作に加えてUI/UXの設計も手掛けているのですが、今回のリニューアルは、ファミリーマートのUX改善であるという考え方で進めました。
まったく新しいパッケージをデザインするのはなく、使いやすさや体験をよりよくする。さらに“ファミリーマートらしさ”をより伝わりやすくする。そのようなことを考えて、問題点を1つずつ解決していったんです。
担当者と話をしたり自分で店頭を見たりする中で、たとえば「ここに商品名があると読みにくい」「ではどこに配置したら、手に取ってもわかりやすいか?」などと考えながら、デザインを作りました。
MZ:ファミマルの記者発表会でも、「どんな商品か一目でわかる」「お客様が選びやすいと同時に、店頭スタッフも陳列しやすい」といった説明がされていましたね。使いやすさに重きを置いたのは、なぜでしょうか。
小川:使いやすい・使いにくいということに、今は皆とても敏感になっていると思っています。スマホのアプリも、使い勝手の悪いものは、すぐにアンインストールされてしまいますよね。見た目がいいものはコモディティ化している反面、使いやすさについては、改善していく余地がまだまだあると思います。
そのため、先ほどお話ししたような店頭でのストレスを解消し、「使い勝手がいいよね」「選びやすいよね」という感覚を持ってもらうことを通じて、「ファミリーマートはお客さんに優しいブランドである」というイメージを持ってもらうことをゴールとしていました。
ファミマらしさをパッケージで表現する
MZ:「ファミリーマートらしさ」を伝える、ということについてはいかがでしょうか?
小川:これまでもアイデンティティとして持っていたものの、お客様に必ずしも伝わりきっていなかった要素を、デザインを通じて伝えようとしました。それは「楽しくて親しみやすい」ということです。ファミリーマートはリニューアル前のブランドでも、「楽しい」ということを掲げていましたし、広告含め、キャンペーンなどでも楽しさをとても大切にされているんです。
今回、すべてのパッケージで商品写真を丸くしたのですが、店頭に行ったときに、丸い形がぽん、ぽん、ぽん、と並んでいると、店頭が楽しくてにぎやかな感じになるのでは、という狙いがありました。
デザインのコンセプトとしては、「F-universal」という言葉を掲げました。「ファミリーマートの考えるユニバーサルデザインは、誰にとっても(FAMILY)、楽しく(FUN)、わかりやすい(UNIVERSAL)ものになる」という意味なのですが、冒頭だけを読むと「FUN」になる、という仕掛けがあったりします。