依頼を受ける姿勢ではなく、より上流から入り込む
MZ:ここまでのお話で、デザインがマーケティング、ビジネスにいかに深くかかわっているのかを改めて感じました。
三浦:マーケティングにおけるデザインの重要性は、今後ますます高まっていくと思います。テクノロジーによって、あらゆるプロダクトが機能の面ではコモディティ化に向かっています。結果として「これを持っていたら幸せだな」とか「手に取りやすい、選びやすい」といった、お客様の一番手元にあるデザインの価値が高まっているのです。
マーケティングの4Pは、「プレイス」誰に、どこで売っているか、「プライス」価格はいくらなのか、「プロダクト」それはどういう商品でどういう機能を持っているのか、そして「プロモーション」どのような販促をやるのか、この4つで構成されています。でも今は、「プロダクト」の一要素である「機能」がコモディティ化しつつあるために、「デザイン」の重要性が上がっている。4Pは、「4P+1D」になっていく、と考えることもできるかもしれません。
小川:だからこそ、デザイナーやクリエイターがより上流に入り込んでいくことを、当たり前にしたいと思っています。頼まれたものを引き受ける、というかかわり方ではなく、クライアントに徹底的に寄り添っていく。

三浦:寄り添うというのは、ただ言うことを聞くことではないんです。いい成果を出すために対等に話し合い、ときにはぶつかることもあります。
今回のパッケージでは、商品写真の上に訴求ポイントを示したアイコンを載せる、というデザインにしました。商品の作り手にとって、写真は本当に重要なものですので、「せっかくのおいしそうな写真を邪魔してしまう」など、いろいろなご意見があったと思います。ただ今回は、すべてのお客様にとってわかりやすいものにすることが大事だと、私たちは考えました。それを丁寧に説明し、受け入れてもらった上で、「アイコンを載せてもおいしそうに見せるにはどうするか」を、改めて工夫する。この、大切なものを守った上で、クライアントの想いを実現できるよう工夫し続けるということが、本当の意味で寄り添うということなのだろうと考えています。

小川:別のプロジェクトでも、社内調整のような動きは結構重要だったりします。キーパーソン同士が話す会議の場を作ることで初めてデザインの話ができる、ということもあるのです。そのようなきっかけ作りからどんどん入り込んでいきたいですし、お客さまのことを一番に考えたときに、やるべきことだと思っています。