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セールスフォースCMO鈴木氏が振り返る2021年 「本当に意味のあるつながり」の深化に向けて

 日本総合研究所やジョンソン・エンド・ジョンソン、DELL、日本コカ・コーラ、メットライフ生命保険など、名だたる企業でマーケティングを統括してきた鈴木祥子氏が、2020年3月にセールスフォース・ドットコムのCMOに就任した。世界中が強制的に変化を強いられたタイミングであったが、参画してから今日まで、セールスフォースとしてできることを強力に推し進めてきたという。コロナ禍で先の見えない状況が続いた2021年を振り返り、マーケティングの観点から注目すべき変化とそれに対応するための同社の取り組み、そしてパーパスの重要性などについて、話を聞いてきた。

セールスフォース CMO就任から1年半、コロナ禍での取り組み

MarkeZine編集部(以下、MZ):鈴木さんが2020年3月にセールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)に参画されてから、約1年半が経ちました。ちょうどコロナ禍に突入したタイミングでの入社でしたが、まずはここまでを振り返っての所感からうかがえますか?

株式会社セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー 鈴木祥子氏
株式会社セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー 鈴木祥子氏

鈴木:セールスフォースは、世の中がコロナ禍に陥った2020年3月から「お客様に寄り添うための取り組み」を早急に行ってきました。これは、部門横断でタスクフォースを結成した全社的な取り組みで、世の中の動向を傾聴する部隊、我々にできること・何をするかを考える部隊、それを実行に移す部隊と3つのチームを組み、「Leading Through Change(いま、私たちができること)」というメッセージのもと、取り組みを進めてきました。

 まさにコロナ禍での入社となりましたが、全社的な取り組みを最初から行うことができたのは、とてもありがたかったと感じています。セールスフォースには、「一人で勝つな、一人で負けるな」という思想があります。何を行うにでも、一つの部門だけでなく、全社的にみんなで寄り添って行動するというカルチャーが根付いているのです。危機に直面した時にこそ、こうしたカルチャーが機能することを実感しました。

MZ:コロナ禍での「お客様に寄り添うための取り組み」について、具体的にはどういったことをされてきたのですか?

鈴木:2020年3月から4月のコロナ禍になったタイミングをコロナ初期(会社の安定化)、ビジネスの再始動、ネクストノーマル(ビジネスの成長)と3つのフェーズに分けて、「セールスフォースとして何ができるか?」を考え、実行してきました。たとえば、ビジネス再始動のフェーズでは、企業や組織が安全に事業を再始動することを支援する新しいソリューション「Work.com」をローンチしています。

 また、セールスフォースでは、従来フィジカルなイベントでお客様にカスタマー事例を伝えるマーケティング手法を取ってきましたが、いち早くオンラインに切り替え、2020年4月には大規模なオンラインイベントを実施しました。2019年と比較するとウェビナーの数が8倍に、ウェビナーに参加いただいたお客様の数も約2倍に増加しており、コロナ禍のお客様の課題に寄り添ったコンテンツを提供できたと思っています。

マーケティング業界における5つの変化

MZ:コロナ禍による生活者の行動様式の変化をはじめ、マーケティング業界ではこの1~2年、特に大きな変化がありました。鈴木さんは長年この業界にいらっしゃいますが、どのような変化に注目されていますか?

鈴木:マーケティングの観点で注目すべき変化は、大きく5つあると考えています。

 1つ目は、今まで以上に消費者が主導権を握るようになってきたということです。コロナ禍になり、日常の消費行動でもデジタルを利用するシーンが非常に増えました。これを企業サイドから見ると、「Moment of Truth(真実の瞬間)」が増えたと言えるでしょう。さらに、消費者は賢くなっていますから、それらすべての接点で一貫したブランド体験を求めています。消費者が主導権を握る中、企業はデータを活用してスピーディかつシームレスに消費者のニーズに応えなければいけません。

 こうした変化を受けて、データとテクノロジーの重要性が今まで以上に高まったというのが2つ目の変化です。10年以上前からデータの必要性については言われており、データ自体は集めている企業が多いと思います。しかし、大事なのはデータを収集することではなく、「本当に必要なデータを抽出して、いかに活用するか」です。その力がこの1~2年で特に問われるようになったと思います。

 それから3つ目は、マーケティング部門だけでは仕事が完結しなくなったということ。セールスフォースには元々様々な部門とコラボレーションして仕事をするというカルチャーがありますが、そんな当社でも、マーケティング部門だけでは仕事が完結しなくなっていることを強く感じています。この背景には、営業やカスタマーサービス部門など多くの部門と連携して、シームレスなブランド体験を提供する重要性が高まっていることがあります。

 そして4つ目は、読者のみなさんも日々感じられていることかと思いますが、マーケティング部門にいる人員数では仕事が回らなくなっています。当社のお客様の話を聞いていても、従業員は増えないが、仕事はどんどん増えている……ということで、今まで以上に業務の効率化が求められていることを実感しています。

 最後5つ目は、企業のパーパスやバリューへの注目・関心が高まっているということ。社外だけでなく、社内の従業員に対しても、日々仕事をする意味、自社のバリューを打ち出していかなければならなくなっています。

MZ:4つ目のマーケターが忙しくなっているというのは、MarkeZineで取材をしていても感じるところです。

鈴木:そうですよね。当社では、全世界のマーケターを対象に毎年「State of Marketing(マーケティングの最新事情)」という調査を実施しています。この中に興味深いデータがありまして、日本のマーケターの約7割が「コロナ禍になってマーケティングの仕事の価値が大きくなった」と回答しているのです。一方で、「データを活用して顧客が求めるブランド体験を作り出すことに満足している」と答えたマーケターは、わずか3割という結果も出ています。

 つまり、ただでさえ仕事が増えて忙しい中、分散しているデータベースから必要なデータを引っ張ってこなければいけない。マーケティングによって会社やお客様に貢献できていると感じてはいるものの、それに必要な足元のデータがそろっていない、というのが現状だと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/27 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37886

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