全世界・全社員がナラティブを自分の言葉で話せるように
MZ:具体的には、どういった活動をされているのですか?
鈴木:セールスフォースでは、年に1回、コーポレートナラティブの社内認定プログラムを実施しています。社員には、当社の理念やコアバリュー、お客様などを自ら理解し、外部のステークホルダーに自分の言葉で伝えることが求められます。そこで、前述のプログラムでは、マーケティング部門であっても他の部門であっても、すべての社員が当社のコアバリューや社会課題、それを解決するための当社プロダクトの考え方について語れるように練習します。トレーニングの結果を直接上司にプレゼンしたり、ビデオに撮って提出する場合もあります。
一般的に、こういった取り組みはマーケティングや広報、営業の部署だけで行っているケースが多いかと思いますが、当社ではあらゆる部門が自分の言葉でコーポレートナラティブを話せるようになるための取り組みをグローバルで行っています。
MZ:ナラティブに込めたメッセージを社外にも広く伝えるための施策がテレビCMの放映だったのだと思いますが、セールスフォースのナラティブの今後の展開についてもお聞かせいただけますか?
鈴木:通常、企業におけるブランディングというと、コーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドに分かれています。しかし、当社のブランディングの場合は「Product(製品)」「People(人)」「Planet(地球)」に分けており、コーポレート・ブランドがないのです。地球も含め、すべてのステークホルダーに対して、セールスフォースとしてどういった支援ができるかを考えていきます。
マーケティングコミュニケーションに関してお話ししますと、2020年11月より「次の世界へ。」というメッセージを打ち出しています。このメッセージには、コロナ禍という大変な時代でも、一人ひとりの活動が世界を変えていくのだ、という思いを込めています。「Trust(信頼)」「Customer Success(カスタマーサクセス)」「Inovation(イノベーション)」「Equality(平等)」という当社の4つのコアバリューをナラティブに落とし込み、マーケティングコミュニケーションや日々の行動に反映させていくことが大切だと思っています。
「本当につながっているか?」を問いていきたい
MZ:鈴木さんが2022年のご自身のテーマを設けるとしたら、何になるでしょうか?
鈴木:「本当につながっているのか?」を追求していきます。「つながる」という言葉はマーケティングでよく使われますが、本当にお客様が望む繋がり方をしているのか、お客様にとって意義のあるブランド体験を提供できているのか、ということがより深く問われるようになると思うのです。我々の場合は、クライアント企業様・社員同士・パートナー企業様・コミュニティの4つの視点で、意味のあるつながり方ができているかを問いていきたいと考えています。

そして、コロナ禍でビジネスの本質を改めて考えるきっかけがあり、これからのニューノーマルに向けてビジネス戦略を改めて整理されている企業が多いと思います。原点に一度立ち戻って、「本当に意味のあるつながり方」を考えるというのは、2022年に我々も注力するところですし、恐らく多くの企業にとっても同様ではないかと思います。