定義がバラバラなCDP 本当に求められている機能は?
MZ:5つの変化の中にもあったデータ活用の重要性の高まりに加え、Cookie規制の問題もあり、CDP(Customer Data Platform)活用が本格化しています。セールスフォースも、昨年日本でInteraction Studioをローンチするなど、CDPの機能拡充に注力されていますね。
鈴木:セールスフォースでは、「お客様が必要としていることは何か?」というVoice of Customerを集めて、製品開発をするサイクルを大切にしています。CDPにはいろいろな定義があり、これは提供する企業によってバラバラです。そこで、CDPに何が求められているのかを改めて整理したところ、次の4つが挙がってきました。

1つ目は、「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」。お客様のデータが活用できる形で1ヵ所に集まっているか、ということがまず大事です。次に2つ目は、「インサイトを分析できる機能」で、3つ目は「エンゲージメントの実行」でした。要は、一つのプラットフォームでデータの収集・インサイトの分析・エンゲージメントまでを行いたいということですね。
そして4つ目は、「AIなどによる効率化の機能」です。仕事が増えている上、人員も足りていないので、人海戦術でこれらを実行しようと思っても間に合いません。
これらのニーズをもとにセールスフォースのCDPは開発されています。私も他社のCDPをすべて把握しきれているわけではありませんが、インサイトとエンゲージメントの両方を一つのプラットフォームに兼ね備えている唯一のCDPであると自負しています。
セールスフォースが「ナラティブ」を重視する理由
MZ:冒頭でお話しいただいたマーケティング業界の変化の中に、「パーパスの重要性」の高まりがありました。長年マーケティング業界にいらっしゃるお立場から、今こうしてパーパスが注目されている背景をどう捉えられていますか?
鈴木:この数年、いち生活者として、人生を考えるような出来事や次の世代のためにできることをしたいと思うような出来事がたくさん起こっています。コロナ禍をはじめ、台風や洪水、地震などの自然災害も多発しており、「人生に大切なことって何だろう?」と考える機会はみなさんも多いのではないでしょうか。そういった時代的な背景がパーパスという原点回帰に影響しているのではないかと思います。
そして、セールスフォースは、創業時より「ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォームである」という理念を持ち続けてきました。たくさんの方々とこれを共有し、一緒に取り組める時代になったことを嬉しく思っています。
MZ:セールスフォースは、ナラティブを重要視したコミュニケーションを展開されています。2020年には、セールスフォースの想いや信念をポジティブなメッセージに落とし込んだテレビCMも放映されました。セールスフォースがナラティブを重視する理由をお聞かせいただけますか?
鈴木:BtoB企業ならではの認知度の重要性が大きな理由としてあります。
BtoBのビジネスでは、世の中に顕在化しているお客様は5%しかおらず、95%が潜在顧客であるというデータがあります。つまり、95%のお客様はいつ接触できるかわからないのです。
一方で、BtoB企業の商品やサービスを購入する際、多くの企業様がショートリストを作成して複数の選択肢の中から購入を決定されますが、そのショートリストのうち3分の2はすでに認知している企業で構成されており、最終的には約95%の確率で元々知っていた企業が採用されています。これらの数字から、BtoB企業でもBtoC企業並みに認知拡大の施策が重要であることがわかると思います。
さらに、BtoB企業にとっては、お客様との打ち合わせや商談、メディアのみなさまとお話しする機会こそが貴重な接点であり、社員には自らが毎日会社のブランドアンバサダーとして、社外のみなさまと接することが求められます。こうしたBtoB企業ならではのビジネス特性を踏まえ、セールスフォースではナラティブを全社員の活動の根幹に据えているのです。
