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コロナに負けないブランドの作り方

一つの“推し”で年商3億円。「ケンズカフェ東京」氏家シェフが語る、ブランドを作る看板商品の作り方


看板商品のデータを徹底的に集める

 こうして、どこにも負けない看板商品を磨き上げれば、おのずとお客様に評価され、売り上げは後からついてくる。そうなれば良いですが、はっきり申し上げて今の時代では通用しません。現代社会において、モノやサービスが良いのは当たり前。ヒットを狙うためのスタートラインへ立った段階に過ぎないからです。

 さきほど「看板商品が口コミで話題になった」とお伝えしましたが、実はそうなるために続けてきたことがあります。何かというと、「看板商品のデータを徹底的にとること」です。私は毎日Googleアナリティクスを活用し、公式サイトへのアクセス状況をチェックしています。どんな検索ワードやリンクからサイトへたどり着き、インターネット上でどう紹介されているか。口コミやInstagram、ツイッターのつぶやきもリアルタイムで検索します。そういった情報の蓄積は、宣伝活動だけでなく経営方針にも活かすことができます

 あるとき、こんな口コミを目にしました。

「ケンズカフェ東京のガトーショコラは、ほんのりブランデーの香りがして美味しい」

 同様の口コミが他にもありましたが、実際は使用していません。

 恐らく、お酒を使用したよその品とイメージが重なり、勘違いされたのでしょう。褒めていただくのはありがたいことですが、その情報を目にされた方に「子どもには食べさせられないな」と誤って判断されかねません。しかし、それは発信されたお客さんが悪いのではなく、お酒が入ってないことを明記していなかった私のせい。そこでリーフレットなどに「アルコールは使用していません」と表記し、誤解はなくなりました。

同じ商品でも「提案の仕方」で魅力はアップする

 また、インターネット上の口コミを集めてみると、面白いことに気がつきました。「電子レンジで温めて食べるとおいしい」「冷蔵庫で冷やしたものが好き」と、お客様が思いおもいの食べ方を投稿されていたのです。私は常温で食べるのが一番と思っていたので戸惑いましたが、好みの食べ方を決めるのはお客さまです。口コミをもとに「温めて・常温で・冷やして」と3つの食べ方を提案するようになってから、『食べログ』の評価が一気に上昇しました。「そんな食べ方があるの? 試してみたい!」と。

 同じ商品であるにも関わらず、提案の仕方を変えただけで魅力がアップしたのです。おかげさまで、前述のように同サイトの「全国チョコレート店ランキング」で第1位を獲得。今も高い評価をいただいています。

 ちなみに今でこそガトーショコラとして売っていますが、マーケティング的にはフォンダンショコラやテリーヌショコラといった名称の選択肢もあり、どのカテゴリーでいくか悩みました。そこで、それぞれの名称でレストランのデザートとして提供し、一番ウケがいいのはどれか試してみたのです。その結果、ガトーショコラが抜群の反響。「よし、ガトーショコラで攻めよう」と決断できました。あのとき、名称をガトーショコラにしていなければ、今の『ケンズカフェ東京』はなかったでしょう。チョコレート味のパウンドケーキのようなものがガトーショコラと呼ばれていた時代に、トロけるような本場の味をガトーショコラとしてお出ししたからこそ、「驚き」が生まれたのです。

 こうしてブランドとなる看板商品を作り上げても、さまざまな要因が壁となって立ちはだかるときがやってきます。ブランドを確立してさらなる成長を目指すには、どうすればいいか? 次回詳しくお話ししたいと思います。

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この記事の著者

氏家 健治(ウジイエ ケンジ)

ケンズカフェ東京 オーナーシェフ

1998年に東京・新宿御苑前にイタリアンレストラン「ケンズカフェ」を開店。経営危機に直面しながらも、ガトーショコラのみの販売に転換。品質の高さを追求したガトーショコラと取捨選択を極めた経営戦略で業績をV字回復させる。2015年のファミリーマートとのコラボレーションを皮切りに、多...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/13 10:47 https://markezine.jp/article/detail/37897

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